スイッチング

EVPN(Ethernet VPN) いーぶいぴーえぬ

BGPVXLANオーバーレイネットワークマルチテナントデータセンターL2VPN
EVPNについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

EVPNはね、離れた場所にあるネットワークを「同じフロアにいるかのように」つなぐ技術だよ!データセンターや拠点間を、まるで一枚の大きなスイッチで結んだみたいに使えるようにしてくれるんだ。BGPっていう賢いルーティングの仕組みを使って、MACアドレスの情報をみんなで共有することで、効率よく・スケーラブルに動くってこと!


EVPNとは

EVPN(Ethernet VPN) は、BGP(Border Gateway Protocol) を使ってイーサネット(L2)の到達性情報を広域に配布し、複数のサイトやデータセンター間を「同一L2ネットワーク」のように見せる技術です。従来のVPN技術がIPレベル(L3)の接続を主な目的としていたのに対し、EVPNはMACアドレスやIPアドレスの情報をBGPのルーティングプロトコルに乗せて交換し、L2とL3をまとめて扱える点が大きな特徴です。

EVPNが注目されるようになった背景には、クラウドやデータセンターの大規模化があります。仮想マシン(VM)やコンテナは物理サーバーをまたいで動き回るため、どこにいても同じネットワークアドレスのまま通信できる環境が求められます。EVPNはこのニーズに応えるために設計されており、VXLAN(Virtual Extensible LAN) などのトンネリング技術と組み合わせることで、大規模なオーバーレイネットワーク(既存ネットワークの上に仮想的に重ねたネットワーク)を実現します。

実務的には、「複数のデータセンターをまたいで同一セグメントを引き延ばしたい」「マルチテナント(複数の顧客環境が共存する)構成を効率よく管理したい」というシーンで採用されます。BGPという実績あるプロトコルを制御プレーンに使うことで、スケーラビリティ(規模拡張性)冗長性 を両立できるのが強みです。


EVPNの構造と仕組み

EVPNは「コントロールプレーン(どこに何があるかを伝え合う部分)」と「データプレーン(実際のパケットを運ぶ部分)」を分離した設計になっています。

役割技術説明
コントロールプレーンBGP(MP-BGP)MACアドレス・IPアドレス・VTEP情報をルーター間で交換
データプレーンVXLAN / MPLS / SRv6実際のパケットをカプセル化して転送
エンドポイントVTEP(VXLANトンネルエンドポイント)パケットをカプセル化・デカプセル化する装置

BGPルートタイプで「何を広告するか」を分類

EVPNでは BGP EVPN ルートタイプ(Route Type) と呼ばれる識別子を使って、異なる種類の情報をひとつのBGPセッションで伝え合います。

ルートタイプ名称用途
Type 1Ethernet Auto-Discoveryマルチホーミング(複数経路接続)の冗長情報
Type 2MAC/IP AdvertisementMACアドレス・IPアドレスの所在を広告
Type 3Inclusive Multicast Ethernet Tagブロードキャスト・マルチキャストの転送先を通知
Type 4Ethernet Segmentマルチホーミングの指定セグメント情報
Type 5IP PrefixL3ルーティング情報(プレフィックス広告)

覚え方:「BGPがMACアドレス帳を配る」

従来のL2スイッチングでは、MACアドレスは「フラッディング(全員に送る)」で学習していました。EVPNではBGPがそのアドレス帳を事前に配布するため、不要なフラッディングが激減します。「BGPがMACアドレス帳をみんなに渡す=EVPNのキモ」と覚えると理解しやすいですよ。


歴史と背景

  • 2000年代初頭:データセンターのL2延伸ニーズが高まるも、STP(スパニングツリー)などの既存技術ではスケールしない問題が顕在化
  • 2010年前後:VXLANが登場し、L2フレームをUDPでカプセル化する手法が普及し始める
  • 2012年:IETF(インターネット技術標準化組織)でEVPNのドラフトが提出される
  • 2015年RFC 7432 として標準化。BGP MPLS-Based EVPNとして正式仕様化
  • 2015〜2016年:VXLANとEVPNを組み合わせた EVPN-VXLAN がCisco・Juniper・Aristaなど主要ベンダー実装され始め、データセンターファブリックの主流技術へ
  • 2018年以降パブリッククラウドとのハイブリッド接続や、SD-WANとの組み合わせにも活用範囲が拡大

EVPNと関連技術の関係

EVPNはコントロールプレーンの「頭脳」部分であり、実際のパケット転送(データプレーン)には複数の技術と組み合わせて使われます。

EVPN と組み合わせるデータプレーン技術 EVPN(コントロールプレーン) BGP でアドレス情報を交換・配布 VXLAN UDP カプセル化・DC ファブリック MPLS WAN・キャリア向け転送 SRv6 IPv6 ベースの次世代転送 典型的な利用シーン DC ファブリック キャリア L2VPN マルチクラウド WAN EVPN-VXLAN RFC 7432 RFC 9252 共通:VTEP(VXLANトンネルエンドポイント)がカプセル化・デカプセル化を担当 物理スイッチ・ソフトウェアスイッチ(OVS など)で実装

EVPN-VXLAN vs 従来のL2延伸技術の比較

比較項目従来のSTP/FDB学習EVPN-VXLAN
MACアドレスの学習方法フラッディングで動的学習BGPで事前配布
スケール数百台レベルで限界数万台以上対応可能
マルチテナント対応困難(VLAN数に制限)VNI(仮想ネットワーク識別子)で大量対応
冗長構成STPによるブロッキングECMP(等コスト多経路)でアクティブ/アクティブ
障害収束速度遅い(30秒〜数分)BGPにより高速収束

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
RFC 7432BGP MPLS-Based Ethernet VPN(EVPN の基本仕様)
RFC 7348VXLAN(EVPNと組み合わせるデータプレーン技術)
RFC 8365A Network Virtualization Overlay Solution Using EVPN(EVPN-VXLAN の詳細)
RFC 9135Integrated Routing and Bridging in EVPN(L2/L3統合ルーティング)
RFC 9252BGP Overlay Services Based on SRv6(SRv6とEVPNの組み合わせ)
RFC 4364BGP/MPLS IP VPN(EVPN の前身となるL3VPN仕様)

関連用語

  • BGP — インターネットや大規模ネットワークで経路情報を交換するルーティングプロトコル。EVPNのコントロールプレーンとして使用
  • VXLAN — L2フレームをUDPでカプセル化するトンネリング技術。EVPNと組み合わせてデータセンターファブリックを構成
  • VPN — 仮想プライベートネットワーク。EVPNはその発展形でイーサネットレベルの仮想化を実現
  • MPLSラベルスイッチングによる高速転送技術。EVPNのデータプレーンとして使用される
  • オーバーレイネットワーク — 既存ネットワークの上に仮想的に重ねて構築するネットワーク。EVPNはその代表的な実現手段
  • VTEP — VXLANトンネルエンドポイント。EVPNにおけるカプセル化・デカプセル化を担う装置
  • スパニングツリープロトコル — 従来のL2ネットワーク冗長化技術。EVPNはこの限界を克服するために採用される
  • SD-WAN — ソフトウェアで制御するWAN技術。EVPNと組み合わせてマルチクラウド接続に活用