Transit Gateway とらんじっとげーとうぇい
Transit Gatewayとは
Transit Gateway(トランジットゲートウェイ) は、AWSが提供するクラウドネットワーク用の「中央集線装置」です。複数の VPC(Virtual Private Cloud) やオンプレミス(自社データセンター)、他のAWSアカウント上のネットワークを、1か所のゲートウェイにまとめて接続できます。
従来は「VPCピアリング」と呼ばれる1対1の接続を拠点ごとに張る必要があり、拠点が増えるにつれて管理が爆発的に複雑になる問題がありました。Transit Gatewayはこの問題を解消するために登場し、ハブアンドスポーク型トポロジー(中心のハブに複数のスポーク=端末が刺さる形)でネットワークを整理します。
企業が複数のAWSアカウントや複数リージョンにシステムを分散させるマルチアカウント構成では、Transit Gatewayはもはや標準的なインフラ部品のひとつになっています。ルーティングの一元管理やセキュリティポリシーの統一もしやすくなるため、ネットワーク管理コストを大幅に削減できます。
Transit Gatewayの仕組みと構造
Transit GatewayはAWSのリージョン内に配置され、各VPCや接続先を「アタッチメント(attachment)」として登録します。接続先への通信はルートテーブルによって制御されます。
| 接続できる対象 | 接続方式 | 主な用途 |
|---|---|---|
| VPC(同一アカウント) | VPCアタッチメント | 社内システムの分離・統合 |
| VPC(別アカウント) | Resource Access Manager (RAM) 経由 | マルチアカウント構成 |
| オンプレミス | VPN / Direct Connect ゲートウェイ | 本社・データセンターとの接続 |
| 別リージョン | Transit Gateway ピアリング | グローバル構成 |
| SD-WAN / サードパーティ | VPN アタッチメント | 拠点網との統合 |
ハブアンドスポーク構造を覚えるコツ
「車輪(ホイール)」をイメージすると覚えやすいです。中心の「ハブ(車軸)」がTransit Gateway、タイヤの外側に向かって伸びる「スポーク(放射状の棒)」がVPCや拠点です。スポーク同士が直接つながらず、必ずハブを経由するのがポイントです。
VPC-A ──┐
VPC-B ──┤
VPC-C ──┼── Transit Gateway ──── オンプレミス
VPC-D ──┤
VPN ──┘
VPCピアリングとの比較
| 比較項目 | VPCピアリング | Transit Gateway |
|---|---|---|
| 接続形態 | 1対1(フルメッシュ) | 1対多(ハブアンドスポーク) |
| 拠点10個の接続数 | 最大45本 | 最大10本 |
| ルーティング管理 | 各VPCで個別設定 | ゲートウェイで一元管理 |
| 帯域幅 | 制限なし(自動) | 最大100Gbps |
| コスト | 通信量のみ | 固定費+通信量 |
| 推奨規模 | 少数・シンプルな構成 | 中〜大規模・複雑な構成 |
歴史と背景
- 2018年11月 — AWS re:Invent 2018にてTransit Gatewayを発表・提供開始。それまでのVPCピアリングの「フルメッシュ問題」を解決するために設計された
- 2019年 — Direct Connectゲートウェイとの統合に対応。オンプレミスとの接続がより柔軟になる
- 2020年 — Transit Gateway ピアリングが一般提供開始。異なるリージョン間のTGT同士を接続できるようになり、グローバル構成が現実的に
- 2021年〜 — マルチキャストサポート、Network Managerとの連携など機能拡充が続く。大手企業のLanding Zone(マルチアカウント基盤)設計での採用が急増
- 現在 — AWS Well-Architected Frameworkでもマルチアカウント設計の標準パターンとして推奨。AzureのVirtual WAN、Google CloudのNetwork Connectivity Centerも類似機能を提供
他クラウドとの比較・構造図
各クラウドプロバイダーもTransit Gatewayに相当する機能を提供しています。
| クラウド | サービス名 | 特徴 |
|---|---|---|
| AWS | Transit Gateway | 最も歴史が長く機能豊富 |
| Azure | Virtual WAN | SD-WANパートナーとの統合が強い |
| Google Cloud | Network Connectivity Center | BGPルーティングが柔軟 |
| オンプレミス相当 | 物理/仮想ルーター | Cisco、Juniperなど |
以下はTransit Gatewayを中心としたネットワーク全体像の構造図です。
関連する規格・RFC
| 規格・RFC番号 | 内容 |
|---|---|
| RFC 4271 | BGP(Border Gateway Protocol)— TGWのルーティングに利用 |
| RFC 4364 | BGP/MPLS IP VPN — Direct Connect接続時の参考規格 |
| AWS BlackBelt Transit Gateway | AWSの公式技術解説(規格ではないがデファクトのリファレンス) |
関連用語
- VPC — AWSクラウド上に作る「自分専用の仮想ネットワーク空間」
- VPCピアリング — 2つのVPCを1対1で直接つなぐ方法。少数ならこれで十分
- Direct Connect — オンプレミス