Elastic IP えらすてぃっく あいぴー
固定IPアドレスAWSパブリックIPEC2IPアドレス管理フェイルオーバー
Elastic IPについて教えて
Elastic IPとは
Elastic IP(エラスティック IP)とは、AWS(Amazon Web Services)が提供する静的なパブリックIPアドレスのサービスです。通常、AWSのEC2インスタンス(仮想サーバー)を起動するたびに割り当てられるIPアドレスは変わってしまいますが、Elastic IPを取得してインスタンスに関連付けることで、同じIPアドレスを恒久的に使い続けることができます。
Elastic IPの最大の特徴は「弾力性(Elastic)」の名が示すとおり、IPアドレスをあるサーバーから別のサーバーへ素早く付け替えられる点にあります。障害が発生したサーバーから正常なサーバーへIPを即座に移動させることで、ユーザーからは同じアドレスに見える状態を維持できます。これはシステムの可用性(止まらないこと)を高める上で非常に重要な機能です。
実務的には、外部のパートナーやシステムと「このIPアドレスからのアクセスを許可する」というホワイトリスト設定をしている場合に特に重宝されます。IPが変わるたびにホワイトリストを更新する手間を省けるため、安定した外部連携を実現するインフラの要として広く活用されています。
Elastic IPの仕組みと特徴
Elastic IPは、以下のような仕組みで動作します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取得方法 | AWSコンソール・CLI・APIから申請。アカウントに割り当てられる |
| 関連付け先 | EC2インスタンス または ネットワークインターフェース |
| 付け替え | 関連付けを外して別のインスタンスへ即座に移動可能 |
| リリース | 不要になったら解放(返却)できる |
| 料金 | インスタンスに関連付けて使用中は無料。未使用・停止中は課金あり |
🔑 「Elastic = 付け替え可能」の覚え方
Elasticはゴムの「伸び縮み」のイメージ。IPアドレスをゴムひものようにどのサーバーにでも引っ張ってくっつけられる、と覚えましょう!
【通常のパブリックIP】
起動: EC2 → IP: 203.0.113.10
再起動: EC2 → IP: 203.0.113.55 ← 変わる!
【Elastic IPあり】
起動: EC2-A → Elastic IP: 54.0.0.1
障害発生 → EC2-B → Elastic IP: 54.0.0.1 ← 変わらない!
📋 Elastic IPの用途分類
| ユースケース | 具体例 |
|---|---|
| 固定アドレスの必要なシステム | 外部パートナーのFWホワイトリスト登録 |
| フェイルオーバー | 障害時に待機系サーバーへIPを移動 |
| DNS設定の安定化 | ドメインのAレコードが変わらない |
| メール送信サーバー | 送信元IPの評判(レピュテーション)維持 |
歴史と背景
- 2006年 — AWSがEC2をリリース。当初のIPアドレスは起動ごとに変わる動的割り当てのみで、安定運用に課題があった
- 2007年 — Elastic IPアドレスサービスが導入。「クラウドでも固定IPを使いたい」という強いニーズに応えた
- 2010年代前半 — クラウド移行の加速とともにElastic IPの利用が急拡大。オンプレミス(自社サーバー)からの移行時に既存のIP管理ルールを維持するために不可欠な機能として定着
- 2019年頃〜 — AWSが未使用Elastic IPへの課金を強化。使い捨て的な取得を抑制し、アドレス資源の枯渇(IPv4アドレスは世界的に枯渇傾向)に配慮した運用を促進
- 現在 — 1アカウントあたりデフォルト5個までという制限があり、大規模利用には上限緩和申請が必要。IPv6の普及とともに役割が変化しつつあるが、IPv4固定IPとして引き続き重要
通常IPとElastic IPの比較・構造
他クラウドとの対応関係
| クラウド | 対応サービス名 |
|---|---|
| AWS | Elastic IP(EIP) |
| Google Cloud | 静的外部IPアドレス(Static External IP) |
| Microsoft Azure | パブリックIPアドレス(Static割り当て) |
| さくらクラウド | グローバルIPアドレス |
どのクラウドでも「固定のパブリックIPをサーバーに割り当てる」機能は存在しますが、AWS独自の呼び名が「Elastic IP」です。
⚠️ Elastic IPを使わなくていいケース
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| ドメイン(URL)でアクセスする場合 | DNSで名前解決するので、IPが変わってもCNAMEやRoute 53のAliasで対応可 |
| ロードバランサー(ELB)を使う場合 | ELBが固定エンドポイントを提供するため不要なことが多い |
| 開発・テスト環境 | 頻繁に起動・停止するため、未使用課金のリスクあり |
関連する規格・RFC
| 規格・RFC番号 | 内容 |
|---|---|
| RFC 791 | IPv4プロトコルの基本仕様。Elastic IPで使われるIPv4アドレスの根拠 |
| RFC 8190 | 特殊用途IPアドレスの最新定義。Elastic IPの割り当て範囲の前提知識 |
| AWS公式ドキュメント | Elastic IP アドレス — AWSが定める利用条件・制限・料金体系 |
関連用語
- EC2(Amazon EC2) — Elastic IPを関連付ける仮想サーバーサービス
- パブリックIPアドレス — インターネット上で使える識別番号。Elastic IPはその固定版
- プライベートIPアドレス — 社内ネットワークなど閉じた環境で使うIPアドレス
- ロードバランサー(ELB) — 複数サーバーに処理を分散する仕組み。Elastic IP不要なことも
- フェイルオーバー — 障害時に自動で予備系に切り替える仕組み。Elastic IPと組み合わせて使う
- Route 53 — AWSのDNSサービス。IPアドレスとドメイン名を紐づける