インシデント対応

セキュリティインシデント せきゅりてぃいんしでんと

情報セキュリティインシデント対応情報漏洩サイバー攻撃CSIRTリスク管理
セキュリティインシデントって何?

簡単に言うとこんな感じ!

会社のシステムや情報に「何かまずいことが起きた!」という出来事のことだよ。ウイルス感染・不正アクセス・情報漏洩など、セキュリティ上の脅威が現実になった瞬間から「インシデント」って呼ぶんだ!


セキュリティインシデントとは

セキュリティインシデントとは、組織の情報システムや情報資産に対して、機密性完全性可用性(いわゆるCIA三要素)のいずれかが損なわれた、または損なわれる恐れが生じた出来事のことです。具体的には、ウイルス・マルウェアへの感染、不正アクセス、情報漏洩、サービス妨害攻撃(DoS/DDoS)、内部不正などが代表例として挙げられます。

「インシデント(incident)」とは英語で「出来事・事件」を意味し、IT文脈では「通常の運用を逸脱した問題のある出来事」全般を指します。その中でもセキュリティ上の脅威に関するものをセキュリティインシデントと呼びます。発注・調達の立場でも「インシデント発生時の対応体制や報告ルートをベンダーと事前に取り決めておく」ことが非常に重要です。

インシデントが発生した場合、放置すれば被害が拡大し、法的責任や社会的信用の損失につながります。そのため「インシデントレスポンス(対応手順)」をあらかじめ整備しておくことが、現代の企業運営において欠かせない要件となっています。


インシデントの種類と深刻度

代表的なセキュリティインシデントを種類・影響度別に整理すると以下のとおりです。

種類具体例主な影響
マルウェア感染ランサムウェア・ウイルス・スパイウェアデータ破壊・暗号化・情報窃取
不正アクセスアカウント乗っ取り・SQLインジェクション情報漏洩・改ざん
情報漏洩個人情報・機密情報の外部流出法的制裁・信用失墜
DoS/DDoS攻撃サービス妨害・過負荷攻撃サービス停止・機会損失
内部不正従業員による持ち出し・改ざん機密情報漏洩・業務妨害
フィッシング偽メール・偽サイトへの誘導認証情報・金銭の詐取
設定ミスクラウドストレージの公開設定ミス情報漏洩

深刻度(重大度)レベルの考え方

インシデントはすべてが同じ重さではありません。対応の優先順位をつけるために深刻度レベルを設定するのが一般的です。

レベル1(Critical): 事業継続に直結する重大被害
レベル2(High)    : 広範囲への影響・個人情報漏洩の疑い
レベル3(Medium)  : 限定的な影響・業務の一部停止
レベル4(Low)     : 軽微な影響・予防的対処で済む

「イベント」と「インシデント」の違い

用語意味
セキュリティイベント観察された何らかの事象(すべて)ログイン試行、ファイルアクセスなど
セキュリティインシデントイベントの中で実際に被害や影響が出たもの不正ログイン成功、データ持ち出しなど

「イベント」はすべての事象を指し、その中で「問題あり」と判断されたものが「インシデント」になります。


歴史と背景

  • 1988年 — 世界初の大規模マルウェア「モリスワーム」がインターネット上に拡散。セキュリティインシデントという概念の原点となる
  • 1988年 — 米国でCERT/CC(コンピュータ緊急対応チーム)が設立。インシデント対応の組織的枠組みが生まれる
  • 1990年代 — インターネット商用化とともにウイルス・不正アクセスが急増。企業がセキュリティ対策を意識し始める
  • 2000年代 — SQL Slammer(2003年)やコンフィッカー(2008年)など大規模インシデントが世界規模で発生
  • 2010年代 — ランサムウェアの台頭(WannaCry 2017年など)。標的型攻撃・APT(高度持続的脅威)が企業の主要リスク
  • 2015年〜個人情報保護法・GDPRなど法規制が整備され、インシデント発生時の報告義務が法的要件となる
  • 2020年代 — クラウド移行・テレワーク普及に伴い攻撃対象が拡大。サプライチェーン攻撃も増加

インシデント対応プロセスとCSIRT

セキュリティインシデントへの対応は、あらかじめ定めたインシデントレスポンスプロセスに沿って進めることが重要です。国際的には NIST SP 800-61 が広く参照されるフレームワークで、以下の4フェーズで構成されます。

① 準備 Preparation 対応体制の整備 ポリシー策定 訓練・教育 ② 検知・分析 Detection & Analysis 異常の発見 影響範囲の特定 深刻度の判断 ③ 封じ込め・根絶 Containment & Eradication 被害の拡大防止 原因の除去 マルウェア駆除 ④ 復旧・改善 Recovery システム復元 再発防止策 報告書作成

CSIRTとは

CSIRT(シーサート/Computer Security Incident Response Team)とは、セキュリティインシデントへの対応を専門に担うチームのことです。社内に設置する「内部CSIRT」と、外部機関として機能する「外部CSIRT」があります。

役割内容
インシデント受付・トリアージ報告を受け、深刻度を判定
技術的対応封じ込め・調査・証拠保全
関係部署への連絡調整経営層・法務・広報・IT部門との連携
外部機関への報告監督官庁・警察・JPCERTへの報告
再発防止原因分析と対策立案

発注側が知っておくべきポイント

ベンダーやSIerにシステムを発注する際は、以下を契約・仕様書に盛り込むことが重要です。

✅ インシデント発生時の報告タイミング(何時間以内に連絡するか)
✅ 対応窓口・エスカレーションルートの明確化
✅ 証拠保全・ログ保管の期間と方法
✅ 再発防止報告書の提出義務
✅ 損害賠償・SLAとの連動

関連する規格・RFC

規格・番号内容
RFC 2350CSIRTの組織・運用に関する期待値と定義を規定
RFC 7970インシデント情報の交換フォーマット IODEF(Incident Object Description Exchange Format)v2
NIST SP 800-61 Rev.2コンピュータセキュリティインシデント対応ガイド(米国標準技術研究所)
ISO/IEC 27035セキュリティインシデント管理の国際規格
個人情報保護法(改正)重大インシデント発生時の個人情報保護委員会への報告義務(日本)

関連用語

  • CSIRT — セキュリティインシデント対応を専門に行うチーム
  • マルウェア — ウイルス・ランサムウェアなど悪意あるソフトウェアの総称
  • 不正アクセス — 権限なく他者のシステムに侵入する行為
  • 情報漏洩 — 機密情報・個人情報が外部に流出すること
  • ランサムウェア — データを暗号化して身代金を要求するマルウェア
  • 脆弱性 — システムやソフトウェアのセキュリティ上の欠陥
  • ゼロデイ攻撃 — パッチ未公開の脆弱性を突く攻撃手法
  • フォレンジック — インシデント後に証拠を収集・解析する技術・手法