GRE(Generic Routing Encapsulation) じーあーるいー
トンネリングカプセル化VPNIPsecルーティングオーバーレイネットワーク
GREについて教えて
GREとは
GRE(Generic Routing Encapsulation) は、あるネットワークプロトコルのパケットを別のプロトコルのパケットで包み込む(カプセル化する)トンネリングプロトコルです。シスコが開発し、現在はIETFの標準として広く使われています。「Generic(汎用)」という名の通り、IPv4・IPv6・AppleTalkなど多様なプロトコルを包んで運ぶことができます。
GREの最大の特徴は、ルーターを越えられないプライベートIPアドレスのパケットを、インターネット経由で届けられるようにすること。拠点間VPNや、BGPルーティング情報を遠隔地へ伝搬させる「GREトンネル」の構築に使われます。ただし、GRE単体では暗号化機能を持たないため、セキュリティが必要な場面では IPsec と組み合わせて使うのが一般的です。
実務では「GRE over IPsec」という構成が定番で、GREがトンネルの「形」を作り、IPsecが「鍵のかかった扉」を提供する役割分担になっています。
GREの仕組みと構造
GREは元のパケットを「カプセル(カプセル化)」して、新しいIPヘッダーとGREヘッダーを付けて送ります。
| 階層 | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 外側IPヘッダー | トンネルエンドポイントのIPアドレス | インターネット上での実際の宛先 |
| GREヘッダー | プロトコルタイプ・チェックサムなど | 中身が何のプロトコルかを示す |
| 内側IPヘッダー | 元のパケットのIPアドレス | 最終的な送受信者(プライベートIPも可) |
| ペイロード | 元のデータ | 実際に届けたいデータ本体 |
送信側ルーター 受信側ルーター
┌─────────────────────────────────────────────────────┐
│ [外側IP] [GREヘッダー] [内側IP] [元データ] │
│ ←─── インターネットを通過 ────────────────────→ │
└─────────────────────────────────────────────────────┘
GREトンネル(仮想の通路)
覚え方:「GREは手紙を封筒に入れる人」
封筒(外側IP)の宛先は「郵便局(ルーター)」、中の手紙(内側IP)の宛先は「本当に届けたい相手」。郵便局は封筒だけ見て配達するけど、相手は中の手紙を読む——これがGREのカプセル化のイメージだよ!
GREヘッダーのフィールド構成
| フィールド | サイズ | 説明 |
|---|---|---|
| Flags & Version | 2バイト | チェックサム有無などのフラグ |
| Protocol Type | 2バイト | 内側パケットのプロトコル種別(IPv4なら0x0800) |
| Checksum(オプション) | 4バイト | エラー検出用(省略可) |
| Key(オプション) | 4バイト | トンネル識別子(省略可) |
| Sequence Number(オプション) | 4バイト | パケット順序管理(省略可) |
歴史と背景
- 1994年 — シスコシステムズがGREを開発。異なるネットワーク間をつなぐ汎用トンネリング手法として提案
- 1994年 — RFC 1701・RFC 1702 として最初の仕様が公開
- 2000年 — RFC 2784 で改訂版が標準化。現在の主流仕様
- 2000年代 — IPsecとの組み合わせ(GRE over IPsec)が企業拠点間VPNの定番構成として普及
- 2010年代 — SDN・SD-WANの普及に伴い、オーバーレイネットワーク技術の基盤として再注目
- 現在 — クラウド環境(AWS・Azureなど)でのハイブリッド接続でも利用され続けている
GRE・IPsec・L2TPとの比較
トンネリングプロトコルにはいくつか種類があります。用途に応じて使い分けが重要です。
| プロトコル | 暗号化 | マルチキャスト対応 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| GRE | ❌ なし | ✅ あり | ルーティングプロトコル伝搬・拠点間トンネル |
| IPsec | ✅ あり | ❌ 基本なし | セキュアなサイト間・リモートVPN |
| GRE over IPsec | ✅ あり | ✅ あり | 企業拠点間VPNの定番 |
| L2TP/IPsec | ✅ あり | ❌ なし | リモートアクセスVPN |
| VXLAN | ❌ 基本なし | ✅ あり | データセンター内オーバーレイ |
関連する規格・RFC
| 規格・RFC番号 | 内容 |
|---|---|
| RFC 1701 | GREの初版仕様(1994年、シスコ提案) |
| RFC 1702 | IPv4上でのGREトンネリング仕様 |
| RFC 2784 | GREの改訂標準仕様(現在の主流) |
| RFC 2890 | GREのKey・Sequence Numberフィールド拡張 |
| RFC 4023 | MPLS over GREのカプセル化仕様 |
関連用語
- VPN — 仮想プライベートネットワーク。GREはVPNトンネルの実装手段のひとつ
- IPsec — 暗号化・認証を行うプロトコル。GREと組み合わせてセキュアなトンネルを構成
- トンネリング — パケットを別のパケットで包んで転送する技術の総称
- カプセル化 — データに別のヘッダーを付けて包み込む処理
- BGP — 拠点間でルーティング情報を交換するプロトコル。GREトンネル上で使われることが多い
- VXLAN — データセンター向けオーバーレイネットワーク技術。GREの後継的な役割も担う
- SD-WAN — ソフトウェア定義WANで、GREトンネルを内部的に活用することがある
- L2TP — レイヤ2トンネリングプロトコル。リモートアクセスVPNでよく使われる