VPN冗長化 ぶいぴーえんじょうちょうか
VPN冗長化フェイルオーバー高可用性バックアップ回線拠点間VPN
VPN冗長化について教えて
VPN冗長化とは
VPN冗長化とは、本社と拠点を結ぶVPN接続を複数経路で構成し、障害発生時にも通信が途切れないようにする設計手法のことです。「冗長化(じょうちょうか)」とは、システムをバックアップも含めて二重・三重に備えておくことを指します。
たとえば、東京本社と大阪拠点をVPNでつないでいる場合、その回線が1本しかなければ、ISP(インターネットサービスプロバイダー)側の障害やルーター機器の故障が起きた瞬間に、拠点間の通信がすべて止まってしまいます。VPN冗長化を行うことで、メインのVPNトンネルがダウンしても予備のトンネルへ自動的に切り替わり(フェイルオーバー)、業務への影響を最小限に抑えられます。
システム発注・選定の立場では、「VPNを導入する=安全・安定」と思いがちですが、冗長化なしのVPNは「一本橋」と同じリスクを抱えています。特に業務の基幹システムやクラウド接続に使う回線であれば、冗長化は必須の検討項目です。
VPN冗長化の主な構成パターン
| 構成パターン | 概要 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| デュアルISP構成 | 2社のISPからそれぞれVPN回線を引く | ISP障害に強い | コストが2倍になる |
| アクティブ/スタンバイ | 常時1本使用し、障害時に予備へ切替 | コストを抑えやすい | 切替時に数秒〜数十秒の断が生じる場合がある |
| アクティブ/アクティブ | 複数トンネルを同時使用・負荷分散 | 帯域を最大活用できる | 設定が複雑になる |
| SD-WAN活用 | ソフトウェアで複数回線を自動制御 | 柔軟な経路制御が可能 | 対応機器・サービスの選定が必要 |
| バックアップ回線追加 | 光回線+LTE/5G回線の組み合わせ | 物理障害にも対応 | LTEはコストや遅延に注意 |
覚え方:「橋は2本渡せ」
冗長化の発想は「橋を2本架けておく」イメージが一番わかりやすいです。川に橋が1本しかなければ、その橋が壊れたら対岸に渡れません。でも2本あれば、1本が工事中でも迂回できます。VPNも同じで、トンネルを2本以上用意することが冗長化の基本です。
フェイルオーバーの速度(目安)
| 方式 | 切替時間の目安 |
|---|---|
| BGPによる動的ルーティング | 数秒〜30秒程度 |
| スタティックルート+死活監視 | 数秒〜1分程度 |
| SD-WANによる自動制御 | 1秒以下〜数秒 |
| 手動切替 | 数分〜数十分(人が気づいてから) |
歴史と背景
- 1990年代後半:専用線(MPLS等)での拠点間接続が主流。冗長化は高コストで大企業のみ
- 2000年代前半:IPsec VPNが普及し始め、インターネット回線を使った低コストなVPN接続が一般化
- 2000年代後半:インターネットVPNの普及とともに「1本だけでは心配」という意識が高まり、デュアルISP構成が検討されるように
- 2010年代:クラウドサービスの普及により、本社〜クラウド間のVPNも冗長化対象に拡大。AWS Direct ConnectやAzure ExpressRouteのバックアップVPNという構成が登場
- 2010年代後半〜現在:SD-WAN(Software-Defined WAN)の登場により、複数回線の自動制御・冗長化がより柔軟かつ低コストで実現可能になった
冗長化構成の全体図
アクティブ/スタンバイ vs アクティブ/アクティブの違い
【アクティブ/スタンバイ】
┌──────────────────────────────────────┐
│ トンネル① ━━━━━━━━━━━━━ 通信中(メイン)│
│ トンネル② ─ ─ ─ ─ ─ ─ 待機中(予備) │
│ │
│ ①が切れた瞬間 → ②が自動で起動! │
└──────────────────────────────────────┘
【アクティブ/アクティブ】
┌──────────────────────────────────────┐
│ トンネル① ━━━━━━━━━━━━━ 通信中(50%)│
│ トンネル② ━━━━━━━━━━━━━ 通信中(50%)│
│ │
│ ①が切れた瞬間 → ②が100%に増加! │
└──────────────────────────────────────┘
関連する規格・RFC
| 規格・RFC番号 | 内容 |
|---|---|
| RFC 4301 | IPsec アーキテクチャの基本仕様 |
| RFC 4271 | BGP-4(動的ルーティングによる経路制御) |
| RFC 7348 | VXLAN(仮想ネットワークのトンネル技術) |
| RFC 8986 | SRv6(SD-WANなどで活用される経路制御技術) |