クラウドの基本概念

クラウドネイティブ くらうどねいてぃぶ

コンテナマイクロサービスKubernetesDevOpsスケーラビリティCNCF
クラウドネイティブって何?クラウドを使えばクラウドネイティブってこと?

簡単に言うとこんな感じ!

ちょっと違うんだ!「クラウドを使う」のと「クラウドネイティブ」は別物だよ。クラウドネイティブっていうのは、クラウドの特性を最大限いかすように最初から設計・開発されたシステムのあり方のこと。たとえば「車を馬車道に走らせる」のか「自動車専用道路を走れるように車を作る」のかの違いみたいなイメージ!


クラウドネイティブとは

クラウドネイティブ(Cloud Native)とは、クラウド環境の特性(柔軟なスケーリング、高可用性、自動化)を最大限に活かせるように、アプリケーションやシステムを設計・構築・運用する考え方・アプローチ全体を指します。単にシステムをクラウド上に置く「クラウドリフト(クラウドへの移行)」とは本質的に異なります。

従来のシステムは、決まった規模のサーバーを前提に「でかいひとかたまり(モノリシック)」として作られていました。クラウドネイティブでは、アプリを小さな部品(マイクロサービス)に分割し、コンテナという軽量な実行環境に乗せ、Kubernetes(クーバネティス)のようなオーケストレーターで自動管理します。これにより、必要なときに必要な分だけ拡張・縮小できる、壊れても自動復旧するといった「クラウドらしい」強みをフルに引き出せます。

CNCF(Cloud Native Computing Foundation)という業界団体が「クラウドネイティブ」の定義や関連技術の標準化を推進しており、コンテナ・サービスメッシュ・マイクロサービス・イミュータブルインフラ・宣言的API(Declarative API)の5要素を核としています。


クラウドネイティブを構成する5つの柱

要素内容身近な例え
コンテナアプリを軽量な実行環境に閉じ込める技術お弁当箱(どこに持っていっても同じ環境で動く)
マイクロサービス機能ごとに独立した小さなサービスに分割する設計レゴブロック(部品ごとに交換・追加できる)
宣言的API「こうあるべき」をコードで宣言し自動管理させる仕組みカーナビ(目的地を告げれば最適経路は自動)
サービスメッシュサービス間の通信を一元管理するインフラ層電話交換局(通話の接続・品質管理を一括)
CI/CDパイプライン開発から本番環境への自動デリバリーの仕組みベルトコンベヤー(作ったものが自動で届く)

「クラウドを使う」との違いを一言で覚えるなら

「クラウドを借りる」のがクラウド利用、「クラウドのために生まれた」のがクラウドネイティブ

語呂合わせ:「ネイティブは生まれつき」。クラウドの仕組みを生まれつき前提に設計されているイメージで覚えよう!

クラウドネイティブ vs 従来型(レガシー)の比較

観点従来型(レガシー)クラウドネイティブ
構造モノリシック(一枚岩)マイクロサービス(部品化)
デプロイ数週間〜数ヶ月1日数十回も可能
スケール手動・大きな単位で増減自動・機能単位で増減
障害対応手動復旧・全体影響大自動復旧・影響局所化
インフラ管理専任チームが手動管理コードで自動管理(IaC
コスト構造固定費(使わなくても払う)従量課金(使った分だけ)

歴史と背景

  • 2000年代前半:Amazonが社内システムの肥大化に悩み、チームごとに独立したサービスとして分割するアーキテクチャを導入。これがマイクロサービスの原型となる
  • 2006年:AWSがIaaS(インフラのクラウド化)を開始。「クラウドにサーバーを借りる」時代が始まる
  • 2013年Docker(コンテナ技術)が登場。アプリの持ち運びが劇的に簡単になる
  • 2014年:Googleが社内技術をもとにKubernetesをオープンソースとして公開。コンテナの大規模管理が現実的になる
  • 2015年CNCF(Cloud Native Computing Foundation)設立。クラウドネイティブの定義・標準化・エコシステム育成が本格化
  • 2017〜2019年:KubernetesがデファクトスタンダードになりCNCFの卒業プロジェクトに。Netflix・Uber・Airbnbなど大手がクラウドネイティブ事例として注目される
  • 2020年代:日本でもDX推進の文脈でクラウドネイティブ移行が経営課題として浮上。政府のデジタル庁もクラウドファースト原則を打ち出す

クラウドネイティブの全体像

クラウドネイティブを構成する技術レイヤーと、開発・運用のサイクルを図解します。

クラウドネイティブの技術スタック 開発・デリバリー(DevOps / CI/CD) コード管理 (Git) CI(自動テスト) CD(自動デプロイ) 監視・フィードバック アプリケーション(マイクロサービス) 認証サービス 決済サービス 商品サービス 通知サービス …など コンテナ基盤(Kubernetes / Docker) コンテナランタイム オーケストレーション サービスメッシュ レジストリ クラウドインフラ(IaaS / PaaS) コンピュート ストレージ ネットワーク マネージドサービス ↑ 下のレイヤーが上のレイヤーを支える構造。全レイヤーが連携してクラウドネイティブを実現する

実務での判断ポイント:うちに必要?

クラウドネイティブへの移行は万能ではありません。発注・選定時に確認すべき観点を整理します。

質問YES→クラウドネイティブ向きNO→既存アーキテクチャで十分かも
ユーザー数・負荷が変動しやすい?自動スケールが強力に効く固定インフラでもコスト効率が良い
機能リリースを頻繁に行いたい?CI/CDの恩恵を最大化できる年数回のリリースなら過剰投資になりうる
開発チームにコンテナ・K8sの知識がある?スムーズに導入できる学習コストが高くなりリスクになりうる
システムが将来的に複雑化・拡大する見込み?マイクロサービスで変更コストを下げられるシンプルなモノリスの方が管理しやすい

💡 発注時の一言チェックベンダーに「クラウドネイティブ対応」と言われたら「コンテナ化されていますか?自動スケールの仕組みはありますか?」と聞いてみよう。言葉だけの場合もあります。


関連用語

  • コンテナ — アプリとその動作環境を軽量なパッケージにまとめる仮想化技術
  • Kubernetes — コンテナの配置・管理・自動復旧を担うオーケストレーションツール
  • マイクロサービス — システムを機能単位の小さなサービスに分割する設計アーキテクチャ
  • DevOps — 開発(Dev)と運用(Ops)を一体化して高速デリバリーを実現する文化・手法
  • CI/CD — コードの変更を自動でテスト・本番環境へ届ける継続的インテグレーション/デリバリーの仕組み
  • IaC(Infrastructure as Code) — インフラ構成をコードで管理・自動化するアプローチ
  • クラウドファースト — システム導入時にまずクラウドの利用を優先する方針・戦略
  • サービスメッシュ — マイクロサービス間の通信を透過的に管理するインフラ層の仕組み