PRINCE2 ぷりんすつー
PRINCE2とは
PRINCE2(Projects IN Controlled Environments 2)は、英国政府が開発・普及させたプロジェクト管理の方法論(フレームワーク)です。「管理された環境におけるプロジェクト」という名前の通り、プロジェクトを計画・実行・終了するまでの流れを、7つの原則・7つのテーマ・7つのプロセスという体系的な枠組みで定義しています。
もともとは1989年に英国政府のITプロジェクト向けに策定されたものですが、現在は業種を問わず世界150か国以上で採用されており、特にヨーロッパや官公庁関連のプロジェクトでは事実上の標準として機能しています。日本でも大手SIer(システムインテグレーター)や公共調達の現場で参照されることが増えています。
PRINCE2の最大の特徴は「プロセス駆動型」であること。何となく進めるのではなく、各フェーズで「何を承認するか」「誰が責任を持つか」「いつ見直すか」を明確に定めることで、発注者側(ビジネス)と実行側(技術者)が同じ土台でコミュニケーションできるようにしています。
PRINCE2の3×7構造
PRINCE2は「7の原則・7のテーマ・7のプロセス」という3つの軸で構成されています。
7つの原則(Principles)
原則は「PRINCE2を名乗るために必ず守るべきルール」です。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| ビジネスの正当化が継続していること | プロジェクトに続ける価値があるか常に確認する |
| 経験から学ぶこと | 教訓を記録・活用し続ける |
| 役割と責任を定義すること | 誰が何をするか明確にする |
| ステージで管理すること | 一定の区切りごとに承認を得る |
| 例外で管理すること | 許容範囲を超えたときだけ上位層に報告する |
| 成果物に注目すること | 作業量ではなく「何が生まれるか」で管理する |
| プロジェクト環境に合わせてテーラリングすること | 規模・業種に合わせて柔軟に適用する |
7つのテーマ(Themes)
テーマは「プロジェクト全体を通じて継続的に注意を払うべき側面」です。
| テーマ | ひとことで言うと |
|---|---|
| ビジネスケース | なぜやるのか・費用対効果は? |
| 組織 | 誰が関わり・誰が決める? |
| 品質 | 何が「合格」か定義する |
| 計画 | いつ・どう進める? |
| リスク | 何が起きそう・どう備える? |
| 変更 | 仕様変更をどう管理する? |
| 進捗 | 今どこにいて・このまま続けるべき? |
7つのプロセス(Processes)
プロセスは「プロジェクトのライフサイクルにおける具体的な活動の流れ」です。
[着手前]
① プロジェクトの立ち上げ前準備(Starting up a Project)
② プロジェクトの立ち上げ(Initiating a Project)
[実行中]
③ ステージの管理(Managing a Stage Boundary)
④ 製品の納品管理(Managing Product Delivery)
⑤ プロジェクトボードのコントロール(Directing a Project)
⑥ ステージのコントロール(Controlling a Stage)
[終了]
⑦ プロジェクトの終了(Closing a Project)
覚え方のヒント:「3つの7」
「な(7)な(7)な(7)つで管理する」 原則・テーマ・プロセスがすべて「7」。試験でも実務でも「777(スリーセブン)」と覚えておくと混乱しにくい!
歴史と背景
- 1975年 — 英国政府が大規模ITプロジェクトの失敗を受け、統一的な管理手法の必要性を認識
- 1989年 — 前身の「PROMPT II」を改良し、「PRINCE」として英国政府標準に採用
- 1996年 — IT以外のプロジェクトにも適用できるよう大幅改訂し、「PRINCE2」として公開
- 2009年 — 大きな改訂。原則・テーマ・プロセスの「3×7構造」に整理
- 2017年 — 「PRINCE2 2017」として改訂。アジャイルとの統合版「PRINCE2 Agile」も登場
- 2023年 — 「PRINCE2 7th Edition」公開。サステナビリティやデジタルプロジェクトへの対応を強化
- 現在 — 世界で200万人以上がPRINCE2資格を取得。特にイギリス・オーストラリア・南アフリカで普及
PRINCE2 vs PMBOKガイド — 2大フレームワークの比較
プロジェクト管理の世界ではPRINCE2と並んで、米国PMI(Project Management Institute)が発行するPMBOKガイドがよく知られています。どちらを参照すべきか迷う場面も多いため、主な違いを整理します。
| 比較軸 | PRINCE2 | PMBOKガイド |
|---|---|---|
| 出自 | 英国政府 | 米国PMI(民間団体) |
| 性格 | 方法論(How to do) | 知識体系(What to know) |
| プロセスの規定 | 詳細なプロセスを明示 | ベストプラクティスの集合 |
| 資格 | PRINCE2 Foundation / Practitioner | PMP(Project Management Professional) |
| 主な普及地域 | ヨーロッパ・官公庁 | 北米・アジア・民間企業 |
| アジャイル対応 | PRINCE2 Agile として統合 | PMBOKガイド7版でアジャイル強化 |
| カスタマイズ | テーラリングを原則として義務付け | 適用は利用者に委ねる |
| 向いているケース | 規模が大きい・ガバナンス重視 | 柔軟性重視・業種横断 |
発注者として知っておくべき実務上の使い分け
- 公共調達・政府系プロジェクトでは仕様書にPRINCE2準拠を明記するケースがある → ベンダー選定時に確認を
- 民間企業の社内システム開発ではPMBOKやアジャイル手法が多い傾向
- 両方を「参考にする」ことは可能。どちらかを選ぶというより「発注先が何を使っているか」を把握するのが実務的
関連する規格・RFC
| 規格 | 内容 |
|---|---|
| ISO 21500:2021 | プロジェクト管理の国際標準。PRINCE2・PMBOKと整合性がある |
| ISO 21502:2020 | プロジェクト管理のガイダンス(プロセス中心) |
| BS 6079 | 英国国家規格のプロジェクト管理標準(PRINCE2の源流の一つ) |
関連用語
- ./001-project-management.md — プロジェクト管理の基本概念
- ./002-pmbok.md — PMI発の世界標準プロジェクト管理知識体系
- ./003-pmo.md — プロジェクト管理を組織横断で支援する部門・機能
- ./004-wbs.md — プロジェクトの作業を階層的に分解した構造図
- ./005-agile.md — 短いサイクルで開発・改善を繰り返す開発手法
- ./007-risk-management.md — プロジェクトで起きうるリスクを特定・対応する活動
- ./008-stakeholder.md — プロジェクトに関係するすべての利害関係者
- ./009-governance.md — 組織やプロジェクトを適切に統制・管理する仕組み