セキュリティグループ せきゅりてぃぐるーぷ
セキュリティグループとは
セキュリティグループとは、クラウド環境(主にAWSなどのIaaS)において、仮想サーバー(インスタンス)に対するネットワーク通信の許可・拒否を制御するための仮想ファイアウォールのことです。物理的なネットワーク機器ではなく、ソフトウェアで実現されており、インスタンス単位で柔軟に割り当てられます。
セキュリティグループは「ステートフル」な動作をするのが特徴です。ステートフルとは「通信の状態を記憶する」ということで、たとえばインバウンド(外から中への通信)を許可すれば、その応答トラフィックは自動的にアウトバウンド(中から外への通信)でも許可されます。管理者が細かいルールをいちいち書かなくてよいので、設定ミスが起きにくい設計になっています。
クラウド移行後のシステム発注や構成検討の場面でも「このサーバーのセキュリティグループはどう設定するか」という議論は必ず出てきます。外部公開サービスなのか・社内限定なのか・DB専用なのかによって設定が大きく変わるため、要件定義の段階で意識しておく必要があります。
セキュリティグループの仕組みと設定項目
セキュリティグループのルールは「インバウンド(受信)」と「アウトバウンド(送信)」の2方向で設定します。
| 項目 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 方向 | インバウンド(受信) / アウトバウンド(送信) | 外→中 / 中→外 |
| プロトコル | 通信の種類 | TCP / UDP / ICMP |
| ポート番号 | 通信の「窓口」番号 | 80(HTTP), 443(HTTPS), 22(SSH) |
| 送信元/送信先 | 通信を許可するIPアドレス範囲 | 0.0.0.0/0(全て)/ 192.168.1.0/24(社内のみ) |
| 説明 | ルールの用途メモ | 「社外Webアクセス用」など |
覚え方:「門番は許可リストだけ持っている」
セキュリティグループは許可ルールしか書けないのがポイントです。「拒否する」というルールは存在せず、「書いていない通信はすべて自動的に拒否」されます。つまり「ホワイトリスト方式」。「この人だけ通す」リストだけを管理するイメージです。
典型的な設定パターン
【Webサーバー用セキュリティグループ】
インバウンド:
- TCP 443(HTTPS)← 0.0.0.0/0(全インターネット)
- TCP 22(SSH) ← 203.0.113.10/32(管理者のIPのみ)
アウトバウンド:
- すべて許可(デフォルト)
【DBサーバー用セキュリティグループ】
インバウンド:
- TCP 3306(MySQL)← Webサーバー用セキュリティグループのIDのみ
アウトバウンド:
- すべて許可
このように、DBサーバーにはWebサーバーからしか通信できない構成にするのがクラウドのベストプラクティスです。
歴史と背景
- 2006年 — AWSがEC2(仮想サーバーサービス)を開始。この時点からセキュリティグループの概念が導入される
- 2009年頃 — クラウド利用の拡大とともに「物理ファイアウォール不要でサーバーを守れる」手軽さが注目を集める
- 2013年 — AWS VPC(Virtual Private Cloud)が一般提供。セキュリティグループに加え、ネットワークACL(サブネット単位の制御) との役割分担が整理される
- 2015年以降 — Azure・GCPなど他クラウドも同等の概念(Azure: ネットワークセキュリティグループ / GCP: ファイアウォールルール)を実装し、業界標準的な考え方として定着
- 現在 — マイクロサービス・コンテナ環境でも「セキュリティグループ的な発想」はKubernetesのNetwork Policyなどに継承されている
セキュリティグループ vs ネットワークACL
クラウド(特にAWS)では似た機能としてネットワークACL(Access Control List)があります。両者の違いを理解しておくと発注・設計の議論で役立ちます。
実務上の使い分けポイント:
- まずセキュリティグループで制御するのが基本。設定がシンプルで管理しやすい
- ネットワークACLは「特定のIPを会社全体でブロックしたい」などサブネット全体に一括で適用したい場合に使う
- 両方使う場合は「ACLが先にチェック → その後セキュリティグループがチェック」という順序で評価される
関連する規格・RFC
| 規格・参考資料 | 内容 |
|---|---|
| AWS公式ドキュメント(VPCセキュリティグループ) | AWSにおけるセキュリティグループの仕様・設定方法 |
| RFC 793 | TCP(ポート番号の元になるプロトコル仕様) |
| NIST SP 800-41 | ファイアウォール設計に関するガイドライン(セキュリティグループの設計思想の参考) |
| CIS AWS Foundations Benchmark | AWSのセキュリティグループ設定に関するベストプラクティス基準 |
関連用語
- ファイアウォール — ネットワーク境界で通信を制御するセキュリティ機能。セキュリティグループはその仮想版
- VPC — Virtual Private Cloud。クラウド上の仮想ネットワーク空間。セキュリティグループはVPC内で機能する
- ネットワークACL — サブネット単位でトラフィックを制御する、セキュリティグループと対になる機能
- インバウンド/アウトバウンド — ネットワーク通信の方向を表す概念。セキュリティグループの設定の基本単位
- ポート番号 — 通信の「窓口」番号。セキュリティグループのルール設定で必ず使う
- ゼロトラスト — 「何も信頼しない」を前提にしたセキュリティ設計思想。セキュリティグループの最小権限設定と親和性が高い