プロトコル補足

PIM(Protocol Independent Multicast) ぴーあいえむ(ぷろとこるいんでぃぺんでんとまるちきゃすと)

マルチキャストルーティングPIM-SMPIM-DMIGMPRP(ランデブーポイント)
PIMについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

PIMは「同じ映像を大勢に同時配信するとき、ネットワークの経路をどう選ぶか」を決めるプロトコルだよ。ライブ配信や社内テレビ放送みたいな「1対多」の通信を効率よく届ける仕組みなんだ!


PIM(Protocol Independent Multicast)とは

PIM(Protocol Independent Multicast) とは、IPネットワーク上でマルチキャスト通信を実現するためのルーティングプロトコルです。マルチキャストとは「1つの送信元から複数の受信者へ同時に同じデータを届ける」通信方式で、動画ライブ配信・株式相場データの一斉配信・社内IPTVなどに使われます。

「Protocol Independent(プロトコル非依存)」という名前の通り、既存のユニキャストルーティングプロトコル(OSPFBGPなど)が持つルーティングテーブルをそのまま流用できるのが最大の特徴です。専用のルーティングテーブルを別途構築する必要がないため、既存インフラに比較的容易に追加導入できます。

PIMはIETFによって標準化されており、企業ネットワーク・ISPネットワーク・放送配信インフラなど幅広い場面で実装されています。マルチキャストの「配信ツリー(Multicast Distribution Tree)」を構築・維持する役割を担い、受信者が増えても送信元への負荷を増やさずに効率的な配信を実現します。


PIMの動作モードと仕組み

PIMには主に2つの動作モードがあり、ネットワークの規模や用途によって使い分けます。

モード正式名称特徴主な用途
PIM-SMSparse Mode(疎モード)受信希望者が少ない・広域ネットワーク向け。明示的に「受信したい」と参加要求するインターネット配信・WAN
PIM-DMDense Mode(密モード)受信者が多い・LAN向け。まず全員に配信し、不要なルートを刈り込む社内LAN・小規模ネットワーク
PIM-SSMSource Specific Multicast受信者が特定の送信元を指定して参加。セキュリティが高いセキュリティ重視の配信
PIM-BIDIRBidirectional PIM双方向ツリーで送受信両方に対応。多対多通信に適するテレビ会議・双方向配信

配信ツリーの種類:RPT と SPT

PIM-SMでは2種類の配信ツリーが使われます。

  • RPT(Rendezvous Point Tree):すべての経路が RP(ランデブーポイント) という中継ルーターを経由する共有ツリー。まず最初にRPへデータが集まり、そこから各受信者へ配信される。
  • SPT(Shortest Path Tree):受信者が一定量のデータを受け取ると、RPを経由せず送信元に直接つながる最短経路ツリーへ切り替わる。遅延を最小化できる。

RPの覚え方

「RP=待ち合わせ場所」

マルチキャストの「待ち合わせ場所」がRP。送信者も受信者もまずRPに集合してから、目的地へ案内される——そんなイメージで覚えよう!


歴史と背景

  • 1988年 — スタンフォード大学のSteve Deering氏がIPマルチキャストの概念を提唱。ユニキャストの非効率を解消する手段として研究開始
  • 1992年 — MBone(Multicast Backbone)が実験的に構築され、インターネット上でのマルチキャスト配信が始まる
  • 1996年 — PIM-DM・PIM-SMの初期仕様がIETFドラフトとして公開
  • 2006年 — PIM-SMの現行仕様 RFC 4601 が標準化。PIM-SSMも RFC 4607 として確立
  • 2011年 — PIM-SMが改訂版 RFC 7761 として更新(現在の最新仕様)
  • 2010年代〜 — 動画ストリーミング・金融データ配信・CDN内部での採用が拡大。企業内IPTVでも標準的な技術に

PIMとマルチキャスト関連技術の関係

マルチキャスト配信はPIM単体では動かず、複数のプロトコルが連携して動作します。

マルチキャスト配信の構成要素 IGMP 受信者がルーターへ 「参加したい」と伝える PIM ルーター間で配信ツリーを 構築・維持するプロトコル ユニキャストルーティング PIMが経路判断に 流用するテーブル(OSPF等) PIM-SM の配信フロー 送信元(Source) RP(集合点) 受信者(Receiver) ①データ送信 ②配信 ③十分なデータ量に達するとSPT(最短経路)へ切替 PIM が「プロトコル非依存」な理由 OSPFやBGPなど既存のルーティングテーブルをそのまま利用→専用ルーティング不要

ユニキャスト・ブロードキャストとの違い

通信方式送信先帯域効率
ユニキャスト1対1通常のWeb通信・メール受信者数分の帯域が必要
ブロードキャスト1対全員ARPリクエストネットワーク全体に流れる
マルチキャスト(PIM)1対グループライブ配信・株価配信グループ内だけに効率配信

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
RFC 7761PIM-SM(Sparse Mode)の現行標準仕様
RFC 4601PIM-SMの旧標準仕様(RFC 7761に更新済み)
RFC 4607PIM-SSM(Source-Specific Multicast)の仕様
RFC 5015PIM-BIDIR(双方向PIM)の仕様
RFC 3973PIM-DM(Dense Mode)の仕様
RFC 2236IGMPv2(受信者がルーターへ参加通知するプロトコル)

関連用語

  • マルチキャスト — 1つの送信元から複数の受信者へ同時にデータを届ける通信方式
  • IGMP — ホストがマルチキャストグループへの参加・離脱をルーターに伝えるプロトコル
  • OSPF — リンクステート型のユニキャストルーティングプロトコル。PIMが経路情報を流用する
  • BGP — インターネット間の経路情報を交換するルーティングプロトコル
  • ルーティングプロトコル — ネットワーク上でパケットの最適経路を決める仕組みの総称
  • ユニキャスト — 1対1で通信する基本的なデータ送受信方式
  • RP(ランデブーポイント) — PIM-SMでマルチキャスト配信の集合点となる中継ルーター
  • CDN — コンテンツを地理的に分散したサーバーから効率配信するネットワーク