B2Cアプリの立ち上げ・グロースガイド
第3話
ユーザーが本当に求めていたもの
ユーザーインタビューをやってみた
ペルソナ「さおりさん」を実際に生きている人から検証するために、子育て中の30代女性5人にオンラインインタビューをお願いした。
テーマは「フォトブックについて、何でも話してください」。
議事録を読み返すと、繰り返し出てくるキーワードがあった。
「泣いた」「じーんとした」「あの頃に戻れた気がした」「親に渡したら喜んでくれた」
印刷の解像度や色域の話は、一度も出なかった。
品質は「あって当然」の前提条件であって、それ自体が買う理由にはなりにくいんだよね。
飛行機を選ぶとき「落ちない」を売り文句にする航空会社はない。「落ちないのは当たり前」だから。フォトブックの印刷品質も同じだよ。
ユーザーが「買う理由」は、品質の上にあるんだ。「泣けるほど懐かしい体験」「大切な人の喜ぶ顔」「過ぎ去った時間への愛着」、そういう感情的な価値が購入を動かしている。
インサイトを言語化する
インタビューの内容を整理すると、3つの「インサイト(隠れたニーズ)」が見えてきた。
インサイト①「作る行為自体が癒し」
フォトブックを作っている間、写真を選びながら「あのとき楽しかったな」と記憶が蘇る。その時間自体が、ユーザーにとって価値になっていた。
インサイト②「渡す相手がいる」
「自分のため」より「祖父母のため」「パートナーへの贈り物」という用途が多かった。フォトブックは「自分が楽しむもの」ではなく「誰かに贈るもの」という文脈で使われている。
インサイト③「完成したときの感動が最大のモーメント」
届いたフォトブックを初めて開いたとき、子どもと一緒にめくるとき——そこが感情のピーク。それ以外は「早く届いてほしい」という待機状態。
インサイトごとに「プロダクトで何ができるか」を考えてみよう。
①「作る行為が癒し」なら → 写真選びのUXをもっと「楽しい体験」にする。写真を見ながらニヤッとできる瞬間を設計するんだ。
②「渡す相手がいる」なら → 「ギフト注文」機能を重視する。メッセージカードや送り先直送をサポートするといいよ。
③「完成時が感動のピーク」なら → 梱包・同梱物・フォトブックを開いた瞬間のデザインを磨く。届いた写真をSNSで共有したくなる仕掛けを作ってみてね。
「印刷クオリティ」ではなく「感動の瞬間の設計」が、差別化の軸になるんだよ。
「感動の保存装置」という定義
インタビューを経て、プロダクトの定義を書き直した。
Before:「スマホ写真を簡単にフォトブックにできるアプリ」
After:「大切な時間を、感動のカタチで残す。家族の思い出保存装置」
言葉が変わると、プロダクトのすべてが変わるんだよ。
コピーライティング、広告クリエイティブ、アプリのオンボーディング文言、梱包デザイン、カスタマーサポートのトーン。
「フォトブックを作るアプリ」として設計するのと、「感動を届けるプロダクト」として設計するのでは、細部の判断がすべて変わってくるよ。
「機能を売る」のではなく「体験・感情を売る」。BtoCプロダクトで長期的に選ばれ続けるサービスは、たいていこの視点を持っているんだ。
ユーザーインタビューの基本
このプロジェクトで初めてユーザーインタビューを経験したが、やり方にコツがあることがわかった。
やってよかったこと
- 「なぜ?」を3回繰り返す(表面的な答えの下に本音がある)
- 「こういうことですか?」と言い換えて確認する
- インタビュー中は自分の意見を言わない(誘導しない)
- 終わった後すぐに感想をメモする
やってしまった失敗
- 「この機能があったら使いたいですか?」と聞いてしまった(「はい」しか返ってこない)
- 仮説を確認しようとして、都合のいい答えを引き出していた
ダメというより「意味がない」んだよね。
人は「あったら使いますか?」と聞かれたら、たいてい「まあ、使うかもしれません」と答える。でも実際には使わないことが多いから。
正しい聞き方は「過去の行動」を聞くことだよ。「最後にフォトブックを作ったのはいつですか?」「そのとき何が大変でしたか?」ってね。人は未来の意向より、過去の行動の方が正直に話せるんだ。