フォトブックアプリ、ゼロから売れるまで

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なぜか私がアプリを作ることになった

「アプリ、やってみない?」

3月の終わり、部長に呼ばれた。

「山田くん、うちもスマホアプリでフォトブックの注文を受け付けるサービス、やってみたいんだよね。担当、お願いできる?」

うちの会社は創業40年の印刷会社だ。法人向けのカタログ・パンフレット印刷が主力で、取引先はメーカーや不動産会社ばかり。自分は営業として3年間、BtoB案件を回してきた。

スマホアプリ?フォトブック?消費者向け?

「……わかりました」

断れる雰囲気ではなかった。

「やってみない?」って聞かれたのに、実質ほぼ命令じゃん……。そもそも何から始めればいいの?

まず「BtoBとBtoCは全然違う」という認識を持つことが出発点だよ。

BtoB(企業向け)は、決裁者が決まっていて、仕様を詰めて、見積もりを出して、契約して売る。関係者は数人。

BtoC(消費者向け)は、名前も顔も知らない何万人もの個人に、自分から手を伸ばして「これ、欲しくなりませんか?」と伝えるんだ。断られても断られても、届け続ける。

お客さんとの「距離感」が根本的に違うんだよね。


BtoBとBtoCの違いを整理する

営業として3年やってきた「感覚」がほとんど通用しないと気づいた。

BtoBBtoC
顧客企業・担当者不特定多数の個人
意思決定複数人・稟議個人の感情・衝動
購入単価高い低い(積み上げが必要)
関係性長期・継続一度切りになりやすい
集客営業・紹介広告・口コミ・検索
成功指標受注件数・売上MAU・CVR・LTV
LTVとかMAUとか、よくわからない横文字が出てきたんだけど……

BtoCのデジタルプロダクトでよく使う指標だよ。

  • MAU(Monthly Active Users):月間アクティブユーザー数。サービスが月に何人に使われているか
  • CVR(Conversion Rate):コンバージョン率。サービスに来た人のうち、実際に購入した割合
  • LTV(Life Time Value):顧客生涯価値。1人のユーザーが生涯を通じて払ってくれる金額の合計
  • CAC(Customer Acquisition Cost):顧客獲得コスト。1人のお客さんを獲得するのにかかった広告費など

「1人を100円で集めて、1人から1,000円もらう」が成立するビジネスかどうか、この指標で判断するんだ。


プロダクトオーナーという役割

部長から「アプリの担当をやれ」と言われたが、具体的に何をすればいいのか。

調べてみると「プロダクトオーナー(PO)」という言葉が出てきた。開発チームに何を作るかを決め、優先順位をつけ、ビジネスの成果に責任を持つ役割らしい。

プロダクトオーナーって、プログラムを書く人じゃないの?

書かなくていいよ!むしろ書いちゃダメな場合もあるくらい。

POの仕事は「何を作るか」を決めることなんだ。エンジニアが「どう作るか」を決める。

具体的にやることはこんな感じ:

  1. ユーザーを理解する:誰が使う?何に困ってる?何が嬉しい?
  2. 優先順位をつける:限られたリソースで、何を先に作るか
  3. 成果を測る:作ったものが数字に結びついているか確認する
  4. チームをまとめる:エンジニア・デザイナー・マーケターをつなぐ

「会社の中で一番ユーザーのことを考えている人」がPOだよ。


まず競合を調べた

何も知らない状態から始めるには、まず「世の中にどんなサービスがあるか」を知るところから。

フォトブック系のアプリをいくつかダウンロードして、実際に使ってみた。

  • Aサービス:写真を選ぶだけで自動レイアウト。操作が簡単だが、カスタマイズが少ない
  • Bサービス:デザインの自由度が高いが、完成まで30分以上かかる
  • Cサービス:価格が安く、SNSシェア機能が充実。ターゲットは若い女性っぽい
競合がいっぱいいるじゃん。勝てるの?

競合がいるということは「市場がある」証拠だよ。ゼロから市場を作るよりずっといい。

大事なのは「全員に勝つ」ではなく「特定のユーザーにとって一番の選択肢になる」こと。

「誰でも使える普通のフォトブックアプリ」では埋もれてしまうんだ。「この人たちにとってのベストな選択肢」になることを目指そう。その「この人たち」を決めるのが次のステップだよ。


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