並行運用 へいこううんよう
簡単に言うとこんな感じ!
新しいシステムに切り替えるとき、いきなり古いのをやめずに「新旧両方を同時に動かす」期間のことだよ!万が一新システムに不具合があっても古い方で業務を続けられる、安全ネット的な運用方法なんだ!
並行運用とは
並行運用(Parallel Operation)とは、既存のシステム(旧システム)から新しいシステム(新システム)へ移行する際に、一定期間だけ新旧両方のシステムを同時に稼働させる移行手法のことです。この期間中は同じ業務データを両方のシステムで処理し、結果を照合することで新システムの正確性と安定性を確認します。
移行プロジェクトで最もリスクが高い瞬間は「スイッチを切り替える瞬間」です。並行運用はその切り替えリスクを最小化するための緩衝期間として機能します。新システムに重大な不具合が見つかっても、旧システムが生きているため業務を止めることなく問題に対処できるのが最大のメリットです。
一般的には数週間〜数ヶ月の並行運用期間を設け、新システムの出力結果が旧システムと一致することを確認しながら段階的に信頼を積み上げていきます。十分な検証が完了したタイミングで旧システムを停止し、完全移行(カットオーバー) へと進みます。
並行運用の構造と進め方
並行運用は大きく3フェーズで構成されます。
| フェーズ | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 準備フェーズ | 新旧システムの環境構築・データ移行・テスト | 並行運用開始の前提条件を整える |
| 並行運用フェーズ | 新旧両システムへの同時入力・結果照合 | 新システムの正確性・安定性を検証する |
| カットオーバーフェーズ | 旧システムの停止・新システムへの完全移行 | 移行の完了と運用安定化 |
「二重入力」が発生することに注意
並行運用中は同じデータを新旧両システムにそれぞれ入力する作業が発生します。現場担当者の負荷が一時的に2倍になるため、期間を長くしすぎると現場が疲弊します。「最短で何日あれば十分な検証ができるか」を事前に設計することが成功のカギです。
並行運用期間の目安
| システム規模・複雑さ | 推奨並行運用期間 |
|---|---|
| 小規模・シンプルな業務システム | 2〜4週間 |
| 中規模・月次処理が含まれるシステム | 1〜2ヶ月(月次締め処理を1回以上含む) |
| 大規模・年次処理が含まれるシステム | 3〜12ヶ月(決算処理を含む) |
歴史と背景
- 1960年代〜1970年代:コンピュータが業務に本格導入された時代から、旧来の手作業帳票と新コンピュータシステムを並行して運用する手法が自然発生的に生まれた
- 1980年代〜1990年代:汎用機(メインフレーム)からオープン系システムへの移行(ダウンサイジング)が盛んになり、並行運用が標準的な移行手法として確立された
- 2000年代:ERP(基幹業務システム)の大規模導入が増え、並行運用期間の設計がプロジェクト計画の重要項目として認識されるようになった
- 2010年代〜現在:クラウド移行の加速に伴い、オンプレミス(自社サーバー)とクラウドの並行運用が広く行われるようになった。また、コンテナ技術やBlue-Greenデプロイメントなど並行運用を自動化・効率化する技術も普及した
移行戦略の比較:並行運用と他の手法
システム移行には並行運用のほかにも複数の戦略があります。どれが最適かはリスク許容度・コスト・スケジュールによって異なります。
| 移行戦略 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 並行運用 | 新旧を一定期間同時稼働 | リスクが低い・安全 | コスト高・現場負荷増 |
| 一斉切り替え(ビッグバン) | ある日を境に一気に切り替え | 期間が短い・コスト低 | 不具合時に影響甚大 |
| 段階的移行(フェーズアウト) | 機能単位・部門単位で順次移行 | リスク分散・柔軟 | 移行期間が長くなる |
| パイロット移行 | 一部の拠点・部門で先行導入 | 影響範囲を限定できる | 全社展開に時間がかかる |
以下の図は、並行運用における新旧システムの稼働期間とカットオーバーの関係を示しています。
並行運用を成功させるチェックポイント
発注・管理する立場から見た、押さえておくべきポイントをまとめます。
① 並行運用期間を最初から計画に組み込む
「とりあえず本番稼働させてから様子を見よう」では遅いです。プロジェクト計画の段階で並行運用の開始日・終了条件・担当者を明確にしておきましょう。
② 終了条件(カットオーバー判断基準)を数値で決める
「なんとなく大丈夫そうだったら切り替え」は危険です。「新旧の出力結果の差異が○件以下」「エラー率が○%以下」など、数値で判断できる終了条件を事前に合意しておくことが重要です。
③ 現場の負荷増に対する手当を用意する
二重入力が発生する現場スタッフへのフォロー(残業対応・ヘルプデスク設置など)を忘れずに。現場の協力なしに並行運用は成り立ちません。
④ 旧システムの廃止スケジュールを曖昧にしない
「安心だから」と旧システムをいつまでも残し続けると、維持コストが膨らみます。並行運用期間の上限(最長でもX日まで)を決めておきましょう。
関連用語
- カットオーバー — システムを本番環境へ正式に切り替えること
- 移行計画 — システム移行の手順・スケジュール・リスクをまとめた計画書
- Blue-Greenデプロイメント — 新旧2つの環境を用意し瞬時に切り替えるリリース手法
- データ移行 — 旧システムのデータを新システムへ移す作業
- リグレッションテスト — 新システムが旧システムと同等の動作をするか確認するテスト
- フェーズ移行 — 機能や部門単位で段階的にシステムを移行する手法
- ロールバック — 問題発生時にシステムを以前の状態に戻すこと
- 受入テスト — 発注者がシステムの要件を満たしているか確認する最終テスト