クラウド移行

移行戦略 いこうせんりゃく

クラウド移行6Rリフト&シフトリホストリファクタリングモダナイゼーション
移行戦略について教えて

簡単に言うとこんな感じ!

「今使ってるシステムをクラウドに持っていくとき、どのやり方で移すか」を決める計画のことだよ!ごっそりそのまま引っ越すか、この機会に作り直すか、いくつかのパターンがあって、コストや期間がぜんぜん違ってくるんだ。


移行戦略とは

移行戦略(Migration Strategy)とは、既存のシステムやアプリケーションをオンプレミス(自社サーバー)からクラウド環境へ移す際に、「どのアプローチで移行するか」を定めた方針・計画のことです。一口に「クラウドへ移す」といっても、そのまま持っていく方法から、クラウドの特性に合わせて作り直す方法まで、複数の選択肢があります。

移行戦略の選択は、コスト・期間・リスク・将来的な拡張性に直結します。「安く早く移したいが、クラウドのメリットをフルに使いたい」という相反する要求をどうバランスするか、プロジェクトの目的とシステムの特性に応じて最適な戦略を選ぶことが重要です。

実務では、一つのシステムに一つの戦略を当てはめるのではなく、複数のシステムをポートフォリオとして分析し、システムごとに異なる戦略を組み合わせるのが一般的です。


移行戦略の「6R」フレームワーク

AWSやGartnerが提唱する 「6R」 が業界標準の整理方法として広く使われています。移行対象のアプリケーションをこの6つのどれに当てはめるかを判断することが、移行計画の出発点になります。

戦略名別名概要コスト期間クラウドメリット
Rehost(リホスト)Lift & Shiftそのまま仮想マシンごとクラウドへ移す低〜中低〜中
Replatform(リプラットフォーム)Lift, Tinker & ShiftOSやDBだけクラウド向けに最適化
Repurchase(リパーチェス)Drop & ShopSaaSに乗り換える(例: 独自CRM → Salesforce)短〜中
Refactor(リファクタリングRe-architectクラウドネイティブ設計に作り直す最高
Retire(リタイア)使っていない・不要なシステムを廃止削減
Retain(リテイン)Revisit移行せず現状維持(後回し)なし

覚え方:「リホ・リプ・リパ・リファ・廃・残」

6Rを日本語頭文字で覚えるなら「リホ・リプ・リパ・リファ・廃・残」。「廃」=Retire(捨てる)、「残」=Retain(残す)と対にすると覚えやすいです。

どの戦略を選ぶべきか?判断の目安

システム分析の入口

├─ 使ってない・重複してる?  →  Retire(廃止)

├─ 移行コスト > メリット?   →  Retain(現状維持)

├─ 市販SaaSで代替できる?    →  Repurchase(乗り換え)

├─ 急ぎで移行が必要?
│   ├─ 最小限の変更でいい    →  Rehost(そのまま移す)
│   └─ 少しだけ最適化したい  →  Replatform(少し改修)

└─ クラウドをフル活用したい  →  Refactor(作り直し)

歴史と背景

  • 2000年代後半:クラウドが登場し始めた頃は「とにかくサーバーをなくしたい」という動機でリホストが主流だった
  • 2011年:Gartnerが「5R」フレームワークを提唱。クラウド移行の体系的な考え方が広まる
  • 2016年:AWSがGartnerの5Rを拡張し「6R」として整理・普及させた。現在の業界標準フレームワークに
  • 2017〜2019年:大手企業のレガシーシステム刷新需要が高まり、Refactor(クラウドネイティブ化)への注目が急増
  • 2020年〜:コロナ禍のDX加速でクラウド移行案件が急増。「リフト&シフトで早く移し、後でRefactor」という二段階戦略が主流になる
  • 現在:生成AIやサーバーレスの普及により、Refactorの重要性がさらに高まっている

戦略ごとのコスト・リスク・メリットの全体像

6Rをビジネス判断の軸(コスト・期間・クラウド活用度)で整理すると、以下のような分布になります。

移行戦略 6R — コスト・期間・クラウド活用度マップ 低コスト・短期間 高コスト・長期間 クラウド活用度 低 クラウド活用度 高 Retire 廃止・削減 Retain 現状維持 Rehost そのまま移行 Replatform 少し最適化 Repurchase SaaS乗り換え Refactor 作り直し クラウド活用度が上がるほど投資増

「二段階戦略」が実務でよく使われる理由

多くの企業では、まずRehost(そのまま移す)で早期にインフラコストを削減し、安定稼働を確認したうえで段階的にRefactorするという二段階アプローチを採用しています。一気にRefactorを目指すと開発期間が長くなりリスクが高まるため、「走りながら改善する」考え方が主流です。


関連する規格・RFC

規格・フレームワーク内容
AWS Migration Acceleration Program (MAP)AWSが提供する移行支援プログラム。6Rを活用した評価・計画手法を含む
Gartner「5 R’s of Cloud Migration」6Rの元となったフレームワーク(2011年)
TOGAF(The Open Group Architecture Framework)エンタープライズアーキテクチャの設計・移行計画に使われる国際標準
AWS Well-Architected Framework移行後のシステム設計品質を評価するAWSのベストプラクティス集

関連用語

  • クラウドネイティブ — クラウドの特性を最大限に活かした設計・開発アプローチ。Refactor戦略の目指す姿
  • リフト&シフト — Rehost戦略の別名。最小限の変更でシステムをクラウドへ移す手法
  • オンプレミス — 自社内にサーバーを設置・運用する従来型のシステム形態。移行元になる
  • IaaS — Infrastructure as a Service。Rehost・Replatformで主に利用するクラウドサービス形態
  • SaaS — Software as a Service。Repurchase戦略で乗り換え先となるクラウドサービス形態
  • TCO(総所有コスト) — 移行戦略の選定時に比較する、導入・運用を含むコスト全体の指標