クラウドセキュリティ

CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management) しーあいいーえむ

クラウド権限管理IAM最小権限の原則過剰権限CSPMAWS/Azure/GCP
CIEMについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

クラウド上の「誰が・何に・どこまでアクセスできるか」を一元管理して、余計な権限を自動で見つけてくれるセキュリティツールだよ。「鍵を渡しすぎてないか」を常に監視してくれる番人みたいな存在なんだ!


CIEMとは

CIEM(Cloud Infrastructure Entitlement Management:クラウドインフラ権限管理)とは、クラウド環境において「誰(ユーザー・アプリ・サービス)が・何に(リソース)・どの操作を(権限)」できるかを可視化・分析・是正するセキュリティ管理の仕組みです。AWSやAzure、GCPといったマルチクラウド環境では、設定された権限の数が膨大になり、人手での管理が追いつかなくなるため、CIEMが自動的に過剰権限や不審なアクセス設定を検出します。

クラウドでは「とりあえず広めの権限を与えておく」運用が横行しやすく、実際には使われていない権限(=ゴースト権限)が大量に蓄積されがちです。この状態はサイバー攻撃者に悪用されるリスクが高く、CIEMはその状況を継続的にスキャンして最小権限の原則(必要最低限の権限しか付与しない考え方)を実現するために使われます。

ガートナーが2021年ごろから提唱し始めたカテゴリで、現在ではCNAPPクラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム)の重要な構成要素として位置づけられています。


CIEMが管理する権限の世界

クラウド環境での権限管理は、登場人物が非常に多く複雑です。CIEMが把握・整理する対象を整理すると次のようになります。

管理対象の種類具体例リスクの例
人間のユーザー開発者・管理者のアカウント退職後もアクティブな権限が残っている
マシンIDEC2インスタンス・Lambdaなどのサービス不要なS3バケットへのフルアクセス
サードパーティ連携SaaS連携のOAuthトークン本来不要なデータへのアクセス権
グループ・ロールIAMロール・AzureのマネージドIDロールの継承で権限が意図せず拡大

「許可されている権限」vs「実際に使っている権限」のギャップが危険

CIEMの核心は、付与されている権限と実際に使われている権限のギャップ(=過剰権限)を可視化することです。

例:あるIAMユーザーの状況

  付与されている権限:S3フルアクセス / EC2フルアクセス / RDS読み取り / Lambda実行 / IAM管理 ...(50種類)
  実際に使った権限:S3読み取り / EC2起動停止(過去90日間の実績)

  → 48種類が「眠ったまま」の過剰権限!
    攻撃者に乗っ取られたら全部悪用される可能性あり

CIEMが行う主なアクション

  1. スキャン — 全クラウド環境の権限設定を自動収集
  2. リスクスコアリング — 過剰権限・未使用権限を危険度でランク付け
  3. 推奨事項の提示 — 「この権限は削除できます」と自動提案
  4. 自動是正 — 設定に応じて過剰権限を自動削除・縮小
  5. 継続監視 — 新たな権限追加をリアルタイムで検知

歴史と背景

  • 〜2015年 — クラウド黎明期。IAM(Identity and Access Management)の概念は存在するが、手動管理が中心。権限の棚卸しは年次の手作業
  • 2017〜2018年 — マルチクラウド採用が加速。AWS・Azure・GCPを併用する企業が増え、権限の数が爆発的に増加。「どこに何の権限があるか分からない」問題が顕在化
  • 2019年 — Capital Oneの大規模データ漏洩事件。AWS上の過剰なIAMロール設定が悪用され、1億人超の個人情報が流出。クラウド権限管理の重要性が世界的に認識される
  • 2020年 — Ermetic・Authomize・CloudKnoxなどCIEM専業スタートアップが登場。Gartnerがカテゴリとして認定
  • 2021年 — MicrosoftがCloudKnoxを買収(現:Microsoft Entra権限管理)。大手ベンダーがCIEMを取り込む動きが加速
  • 2022〜現在 — CIEMはCSPM(クラウドセキュリティ態勢管理)と統合されCNAPPプラットフォームへ。Palo Alto Networks・WizOrca Securityなどが機能として内包

CIEM・CSPM・IAMの違いと関係

似た用語が多く混乱しがちなので、整理します。

用語フルネーム主な管理対象何を見るか
IAMIdentity and Access Managementユーザー・ロール・ポリシー権限の設定・付与そのもの
CSPMCloud Security Posture Managementクラウドリソースの設定設定ミス・コンプライアンス違反
CIEMCloud Infrastructure Entitlement Management権限と実際の使用状況過剰権限・未使用権限のギャップ
CNAPPCloud-Native Application Protection Platform上記すべてを統合クラウド全体のリスクを一元管理
CNAPP(統合プラットフォーム)の構成 CNAPP CIEM 権限の過不足を管理 ・過剰権限の検出 ・未使用権限の削除提案 ・最小権限の自動適用 CSPM 設定ミスを管理 ・公開S3バケットの検出 ・コンプライアンス違反の特定 ・セキュリティベンチマーク IAM(基盤) ユーザー・ロール・ポリシーの作成・付与・管理 CIEMはIAMの設定をベースに「実態との乖離」を分析する

CIEMが特に重要な場面

  • マルチクラウド環境 — AWS・Azure・GCPを横断して権限を一元管理したい
  • コンプライアンス対応 — SOC2・ISO27001・PCI DSSなどで最小権限の証明が求められる
  • ゼロトラスト移行 — 「信頼しない・常に検証する」を権限レベルで実装したい
  • M&A後の統合 — 買収した企業のクラウド権限を安全に整理したい

関連する規格・フレームワーク

規格・フレームワーク内容
NIST SP 800-207ゼロトラストアーキテクチャの指針。最小権限の原則を定義
CIS Benchmarksクラウドサービス別のセキュリティ設定ベストプラクティス
SOC 2 Type IIアクセス管理の証跡・最小権限の実装が審査対象
ISO/IEC 27001情報セキュリティのアクセス制御要件(箇条9)
PCI DSS v4.0カード情報へのアクセスを必要最小限に限定する要件

関連用語