負荷分散と可用性

BCP(事業継続計画) びーしーぴー

事業継続計画ディザスタリカバリRTORPOリスクマネジメント可用性
BCPについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

地震や火災、サイバー攻撃が起きたとき「会社をどうやって動かし続けるか」をあらかじめ決めておく計画書だよ!「何が起きても仕事を止めない」ための”転ばぬ先の杖”なんだ。


BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、大規模な災害・システム障害・感染症の流行といった予期せぬ事態が発生したときでも、企業が重要な事業を継続・早期復旧できるようにするための計画です。単なる「被害対策マニュアル」ではなく、「どの業務を・誰が・いつまでに・どうやって再開するか」まで具体的に定めておくことが特徴です。

ITシステムとの関係では、サーバーやデータのバックアップ体制・クラウドへの切り替え手順・リモートワーク環境の確保などが中心的な対策となります。「システムが落ちた=業務が止まる」という状況を防ぐために、IT部門とビジネス部門が協力してBCPを作り込む必要があります。

BCPを単に作るだけでなく、定期的な訓練・見直し・改善まで含めた継続的な取り組みをBCM(Business Continuity Management:事業継続マネジメント)と呼びます。計画書を作って棚に眠らせてしまっては意味がなく、“生きた計画”として運用することが重要です。


BCPの核心:RTO・RPO・RTEの3指標

BCPを設計するうえで、まず決めなければならないのが「どこまで許容できるか」という目標値です。特に以下の3つが重要な指標となります。

指標正式名称意味
RTORecovery Time Objective(目標復旧時間)障害発生から業務再開まで許容できる最大時間「24時間以内に復旧」
RPORecovery Point Objective(目標復旧時点)どの時点のデータまで失っても許容できるか「最大1時間前のデータまで」
RTERecovery Time Envelope(復旧作業の時間的余裕)RTOを達成するために使える実作業時間「復旧作業に使えるのは18時間」

🧠 覚え方:RTO・RPOを整理するコツ

【RTO】 → 「時間」の話:どれだけ早く"再開"できるか
【RPO】 → 「データ」の話:どこまで"失っても"許容できるか

たとえるなら:
  RTO = 「停電から何時間以内に電気を復旧するか」
  RPO = 「停電前の何時間前まで冷蔵庫の食品を守れたか」

BCPの対象範囲:何を守るかを決める

BCP策定では、まずBIA(Business Impact Analysis:業務影響度分析)を行い、停止したときの影響が大きい業務を洗い出します。

優先度 高 ┌─────────────────────────────────┐
         │ 受発注システム / 決済処理 / 顧客対応 │
         ├─────────────────────────────────┤
         │ 在庫管理 / 社内承認フロー          │
         ├─────────────────────────────────┤
優先度 低 │ 社内報告書作成 / 備品管理         │
         └─────────────────────────────────┘

歴史と背景

  • 1990年代:米国で金融機関を中心に「災害時の業務継続」が意識され始める。1993年のワールドトレードセンター爆破事件が契機の一つに
  • 2001年:9.11同時多発テロ。オフィスが突然消滅する事態を受け、BCPの重要性が世界的に認識される
  • 2004年:ISO/IEC 17799(情報セキュリティ管理基準)にBCPが明記され、国際標準として定着
  • 2011年:東日本大震災。日本企業が実際に大規模な事業継続危機に直面し、BCPの未整備が露呈。以降、日本国内での普及が急加速
  • 2012年:BCMの国際規格 ISO 22301 が制定。BCP策定の世界的なベースライン
  • 2020年:COVID-19パンデミック。「感染症」という新たなリスクへの対応がBCPに加わり、リモートワーク基盤の整備が急務となる

DR(ディザスタリカバリ)との違い

BCPと混同されやすいのがDR(Disaster Recovery:災害復旧)です。似ているようで、目的と範囲が異なります。

BCP(事業継続計画) Business Continuity Plan 目的:事業を"止めない" 対象:ヒト・モノ・カネ・ITすべて 範囲:経営判断・拠点移転・人員配置 タイミング:発生前〜発生中〜復旧後 主な担当:経営層・総務・IT・各部門 📋 より広い概念 DR(災害復旧) Disaster Recovery 目的:ITシステムを"復旧する" 対象:サーバー・データ・ネットワーク 範囲:バックアップ・フェイルオーバー タイミング:発生後の復旧作業 主な担当:IT部門・インフラチーム 🖥️ BCPの一部 含む

BCPは「会社全体の事業を守る大きな計画」で、DRはその中の「ITシステム復旧」に特化した部分と理解するとよいでしょう。発注・選定の場面では、「DRだけを対策してもBCPにはならない」という点を押さえておくことが重要です。

BCPのITシステム対策例

対策具体例効果
データバックアップ日次・時間次バックアップ、遠隔地保管RPOの短縮
冗長化クラスタリングサーバーの二重化、ロードバランサー単一障害点の排除
クラウド活用AWS/Azure/GCPへの切り替え準備RTOの短縮、物理的被害の回避
リモートワーク基盤VPN・クラウドストレージ・Web会議オフィス閉鎖時の業務継続
DR サイト別拠点・別データセンターへの切り替え拠点消滅時の継続運用

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
ISO 22301事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格。BCPの策定・運用・改善を体系化
ISO 22313ISO 22301の解説・ガイダンス規格
NIST SP 800-34米国国立標準技術研究所によるIT系BCPガイドライン
ISO/IEC 27031情報通信技術(ICT)の事業継続に関するガイドライン
内閣府 事業継続ガイドライン日本政府が公開するBCP策定の手引き(第三版)

関連用語

  • DR(ディザスタリカバリ) — 災害発生後にITシステムを復旧させる計画・対策の総称
  • RTO — 障害発生から業務再開までに許容できる最大時間
  • RPO — どの時点のデータまで失っても許容できるかを示す指標
  • フェイルオーバー — 障害時に自動的に予備システムへ切り替える仕組み
  • 冗長化 — システムの一部が壊れても全体が止まらないよう二重・三重に備えること
  • SLA — サービス品質の保証水準を定めた契約。RTOやRPOと連動して設定されることが多い