ネットワークセキュリティ

ARPスプーフィング えーあーるぴーすぷーふぃんぐ

ARPMACアドレス中間者攻撃なりすましパケット盗聴LANセキュリティ
ARPスプーフィングについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

社内ネットワークの「住所案内係」に偽の情報を書き込んで、他人の通信を横取りする攻撃だよ!「この人への手紙は私に渡して」って嘘をついて、こっそり中身を読む感じ。社内LANで気づかれにくいのが厄介なんだ!


ARPスプーフィングとは

ARPスプーフィングARP Spoofing)とは、ローカルネットワーク(LAN)上でARP(Address Resolution Protocol)の仕組みを悪用し、偽のMAC情報を他の機器に信じ込ませる攻撃手法です。攻撃者は「自分が特定の機器だ」と偽ることで、本来は別の機器に届くはずの通信を横取りできます。「ARPポイズニング(ARP Poisoning)」とも呼ばれます。

ARPとは、IPアドレス(論理的な住所)からMACアドレス(物理的な住所)を調べるためのプロトコルです。たとえば「192.168.1.1に送りたいけど、MACアドレスは何?」と尋ねると、該当機器が「私のMACはXX:XX:XX:XX:XX:XXです」と答える仕組みです。ARPスプーフィングはこの仕組みに偽の返答を割り込ませ、ARP キャッシュ(機器が一時保存するIP↔MACの対応表)を汚染します。

攻撃が成功すると、攻撃者は被害者とルーター(インターネット出口)の間に割り込み、中間者攻撃(Man-in-the-Middle Attack / MitM) を実現します。通信内容の盗聴・改ざん・セッションハイジャックなど、さまざまな二次攻撃につながる危険な起点となります。


ARPスプーフィングの仕組み

正常時のARP通信

ステップ動作
① ARPリクエスト端末Aが「192.168.1.1のMACを教えて」とブロードキャスト
② ARPリプライルーターが「私のMACはAA:AA:AA:AA:AA:AAです」と返答
③ キャッシュ保存端末AがIPとMACの対応をARPキャッシュに記録
④ 通信開始以後はキャッシュを参照して直接通信

攻撃時の流れ

ステップ攻撃者の行動
① 偽ARPリプライ送信(被害者向け)「ルーター(192.168.1.1)のMACは私(BB:BB…)だよ」と嘘をつく
② 偽ARPリプライ送信(ルーター向け)「被害者(192.168.1.100)のMACは私(BB:BB…)だよ」と嘘をつく
③ ARPキャッシュ汚染双方のキャッシュに誤ったMACアドレスが記録される
④ 通信の横取り全トラフィックが攻撃者のマシンを経由するようになる

ARPスプーフィングの特徴

  • 認証機構がない:ARPプロトコルは送信元を検証しない設計
  • リクエストなしでも有効:ARPリプライは要求なしに送りつけることができる(Gratuitous ARP)
  • キャッシュの上書き:同じIPに対して後から届いた情報で上書きされる

歴史と背景

  • 1982年 — ARPがRFC 826として標準化。シンプルさ優先で認証機構は設けられなかった
  • 1990年代前半 — ARPスプーフィングの脆弱性がセキュリティ研究者に認識され始める
  • 1990年代後半 — スイッチ型LANの普及により盗聴が難しくなった反面、ARPスプーフィングでスイッチを回避する攻撃が注目される
  • 2000年代arpspoof(dsniffツール群)などの攻撃ツールが公開。誰でも実行可能になり、内部脅威ペネトレーションテストの常套手段に
  • 2000年代後半〜 — Dynamic ARP Inspection(DAI)などの対策機能がエンタープライズ向けスイッチに実装される
  • 現在ゼロトラストネットワークの普及やVLAN分離の徹底により対策が進むが、古い環境では依然として有効な攻撃手法

攻撃手法・関連攻撃・対策の比較

ARPスプーフィングの攻撃フロー(中間者攻撃) 被害者端末 192.168.1.100 攻撃者 MAC: BB:BB:BB:BB:BB:BB ルーター 192.168.1.1 ① 偽ARP「ルーターのMACはBB:BB...」 → 被害者のARPキャッシュを汚染 ② 偽ARP「被害者のMACはBB:BB...」 → ルーターのARPキャッシュを汚染 ③ 全通信が攻撃者を経由(中間者攻撃成立) 盗聴 / 改ざん / セッションハイジャック 対策: Dynamic ARP Inspection スイッチが偽ARPをブロック 対策: 静的ARPエントリ 手動でIP↔MACを固定登録 対策: 暗号化通信(HTTPS/TLS) 横取りされても内容を守る

主な対策一覧

対策手法概要効果
Dynamic ARP Inspection(DAI)スイッチがDHCPスヌーピングDBと照合し、偽ARPをブロック◎ 根本的な防止
静的ARPエントリサーバーなど重要機器のIP↔MACを手動で固定○ 小規模環境向け
HTTPS / TLS 暗号化通信を暗号化し、盗聴・改ざんを無効化○ 被害軽減
VLANの適切な分離攻撃対象を同一セグメントに限定させない○ 被害範囲の縮小
ARPスプーフィング検知ツールXArp、arpwatchなどで異常なARP変化を監視○ 早期発見
ゼロトラストネットワーク内部ネットワークでも認証・暗号化を必須にする◎ 構造的対策

関連する攻撃手法

攻撃名関係
中間者攻撃(MitM)ARPスプーフィングで実現される代表的な攻撃
セッションハイジャック横取りしたセッションIDを悪用してなりすまし
DNSスプーフィングARPと同様、キャッシュを汚染してDNS応答を偽造
SSLストリッピングMitM成立後、HTTPS→HTTPに降格させ平文を盗聴

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
RFC 826ARPの標準仕様。1982年策定。認証機構を持たないシンプルな設計
RFC 5227IPv4アドレス衝突検出(Gratuitous ARPの利用に関する仕様)
RFC 7048Neighbor Unreachability Detection(IPv6における隣接探索の改善)

関連用語

  • ARP — IPアドレスからMACアドレスを解決するプロトコル。スプーフィングの対象となる仕組みそのもの
  • MACアドレス — ネットワーク機器に割り当てられた物理アドレス。ARPで解決される識別子
  • 中間者攻撃(MitM) — ARPスプーフィングで実現できる代表的な攻撃。通信を密かに横取りする
  • DNSスプーフィング — ARPスプーフィングと同様にキャッシュを汚染する攻撃。DNSの名前解決を偽装する
  • VLAN — ネットワークを論理的に分割する技術。ARPスプーフィングの被害範囲を限定できる
  • ゼロトラスト — 内部ネットワークも信頼しないセキュリティモデル。ARPスプーフィングへの構造的対策
  • TLS — 通信を暗号化するプロトコル。ARPスプーフィングで盗聴されても内容を守る
  • パケットキャプチャ — ネットワーク上のパケットを収集・解析する技術。ARPスプーフィングの確認・調査に使われる