ネットワーク監視・トラブルシュート

MTR(My Traceroute) えむてぃーあーる

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MTRについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

MTRは「pingとtracerouteを合体させた、ネットワーク版カーナビ」だよ!どこで渋滞(遅延)が起きてるか、どこでパケットが消えてるかをリアルタイムで画面に表示し続けてくれる診断ツールなんだ!


MTRとは

MTR(My Traceroute、旧称 Matt’s Traceroute)は、pingとtracerouteの機能を統合したネットワーク診断ツールです。通常のtracerouteが「ある時点のルート情報を1回だけ取得する」のに対し、MTRは継続的にパケットを送り続け、各経路上のルーター(ホップ)ごとの遅延・パケットロスをリアルタイムに更新表示します。

ビジネスの現場では、「Webサイトへのアクセスが遅い」「特定のサーバーへの接続が不安定」といったトラブル時に、原因がどこにあるのかを素早く絞り込むために使われます。自社内の問題なのか、ISP(インターネットサービスプロバイダ)の問題なのか、相手先サーバー側の問題なのかを区間ごとに可視化できる点が最大の強みです。


MTRの画面の読み方

MTRを起動すると、以下のような情報が表示されます。

列名意味注目ポイント
Host経由するルーターのIPアドレスまたはホスト名???は応答なし(ICMP制限など)
Loss%パケットロス率10%超えたら要注意、途中だけ高い場合は優先度低め
Snt送信したパケット数測定サンプル数の目安
Last直近の応答時間(ms)瞬間値のため参考程度
Avg平均遅延(ms)最も信頼できる指標
Best最短遅延(ms)理想的な状態の参考値
Wrst最長遅延(ms)スパイクの大きさを確認
StDev標準偏差(ジッター)値が大きいほど遅延が不安定

「途中のホップだけLoss%が高い」は誤報かも

MTRでよくある誤読が「途中のルーターだけロスが多い」ケース。これはそのルーターがICMPパケット(診断用)への応答を意図的に制限しているだけで、実際のデータ通信には影響がない場合があります。判断のコツは「その先のホップでロスが引き継がれているかどうか」を確認することです。

国内・国外ホップの遅延の目安

区間典型的な遅延
国内(同一都市)1〜10ms
国内(遠方)10〜30ms
日本〜北米西海岸100〜150ms
日本〜欧州200〜300ms

歴史と背景

  • 1997年 — Matt Kimball氏がオリジナルの「Matt’s Traceroute」を開発・公開。Linuxコミュニティを中心に広まる
  • 1998年ごろ — Roger Wolff氏が開発を引き継ぎ、改良を重ねる。名称が”My Traceroute”に改称
  • 2000年代 — Linux/Unix系OSのネットワーク管理者の定番ツールとして定着。多くのディストリビューションに標準パッケージとして収録
  • 2010年代 — macOS向けに WinMTR(Windows版)や mtr-packet など派生ツールが登場し、GUIで操作できる環境も整備
  • 現在 — クラウド環境・コンテナ環境のトラブルシュートでも活用。mtr --reportオプションでCI/CDパイプラインへの組み込みも普及

pingとtracerouteとMTRの違い

それぞれの道具には得意・不得意があります。三つを比較して整理しましょう。

ping / traceroute / MTR の比較 ping 目的地まで届くか? 往復の遅延を確認 ✅ シンプル ✅ どこでも使える ❌ 経路はわからない ❌ ロス箇所特定不可 例: 目的地が生きてるか だけ知りたいとき traceroute どの経路を通るか? 各ホップを1回測定 ✅ 経路が見える ✅ どこで止まるか分かる ❌ 1回きりの測定 ❌ 継続監視できない 例: どこのルーターで 止まってるか調べるとき MTR 経路+継続監視 ping+tracerouteの統合 ✅ 経路が見える ✅ ロス率・統計も取れる ✅ リアルタイム更新 ❌ やや知識が必要 例: 断続的な遅延や ロスの原因を特定するとき * Windowsではtraceroute → tracert / MTR → WinMTR

よく使うコマンドオプション

# 基本的な使い方(Linuxの場合)
mtr google.com

# レポート形式で出力(ログ保存・報告書に便利)
mtr --report --report-cycles 100 google.com

# TCP 443番ポートで試す(ICMPをブロックしている場合に有効)
mtr --tcp --port 443 google.com

# IPアドレスのみ表示(DNS逆引きしない)
mtr -n google.com

# Windowsでは WinMTR(GUIツール)を使う

MTRの結果でISPに問い合わせる時のコツ

ベンダーやISPへの障害申告時は mtr --report の出力を貼り付けるだけでどの区間が問題かを明確に伝えられます。口頭で「なんか遅いです」と伝えるよりも対応が圧倒的に早くなります。


関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
RFC 792ICMP(Internet Control Message Protocol)の定義。pingやtracerouteの基盤
RFC 4443ICMPv6の定義。IPv6環境でのMTRに関係
RFC 2784GRE(Generic Routing Encapsulation)VPN経由でMTRを使う際に関連

関連用語

  • ping — 宛先ホストへの到達性と往復遅延を確認するコマンド
  • traceroute — 宛先までの経路上にあるルーターを一覧表示するコマンド
  • パケットロス — 送信したパケットが途中で消失する現象。MTRのLoss%で確認できる
  • レイテンシ — ネットワークの応答遅延時間。MTRのAvg列で確認する
  • ホップ — パケットが経由するルーターの1区間。MTRでは各行が1ホップに対応
  • ICMP — pingやtraceroute・MTRが使用するネットワーク制御メッセージプロトコル