セキュリティニュース

緊急 Linux (2026年11月4日 更新)

Linux カーネルの TCP に欠陥(CVE-2026-98432)— ネットにつながったほぼすべての Linux サーバーが対象。更新と再起動を

ひとことで言うと

  • Linux の中心部分(カーネル)の、インターネット通信の土台(TCP)に、ログインなしで外から狙える欠陥(CVE-2026-98432)が見つかりました。深刻度は CVSS 9.8。
  • 対象は、IPv4 で外からの接続を待ち受けている、ほぼすべての Linux。Web サーバー、メールサーバー、VPN 装置、クラウドの仮想マシン、コンテナの土台まで含まれます。
  • 欠陥は Linux 4.4(2016年)から10年近く潜んでいました。悪用の報告はまだありませんが、サーバーを乗っ取る攻撃に成功したという研究者の発表があります。
  • Red Hat・Debian・Amazon Linux などは修正版を公開済み。Ubuntu はまだ準備中です。修正版のカーネルを入れて再起動してください。それまではファイアウォールでの遮断が有効です。

この記事は 11月3日時点の情報です。Ubuntu の修正版が出たら追記します。

11月4日追記:SUSE が SLES 15 SP7 の修正版を公開しました。Ubuntu は11月4日時点でもまだ「準備中」で、修正版は出ていません。米 CISA の「悪用中」リストにも、まだ入っていません。

何が原因か

インターネットでパソコンとサーバーがつながるときは、まず「あいさつ」を3回やりとりしてから通信を始めます(TCP の3ウェイハンドシェイク)。

この「あいさつ」には、めったに使われない**おまけの情報(IP オプション)を付けられます。Linux は、あいさつが済んだとき、このおまけの情報を新しい接続に「コピーせずにそのまま渡して」**いました。

ところが、相手が最初のあいさつをもう一度送り直してくると、サーバーの別の処理がその情報を読みに行くことがあります。そのとき、元の持ち主はもう情報を片付けてしまっている——つまり、捨てたはずの場所を読み書きしてしまうのです。これを「解放後使用(use-after-free)」と呼びます。

項目内容
場所Linux カーネルの TCP(IPv4)の接続を始める処理
種類解放後使用(use-after-free)。2つの処理が同時に動いたときの「すれ違い」で起きる
攻撃の条件ログイン不要。IPv4 で TCP を待ち受けているポートに、おまけの情報を付けた接続を送り、送り直す
入り込んだ時期Linux 4.4(2016年ごろ)から
IPv6今回の主な入口は対象外

何が起きたか

  • 10月5〜6日:Linux の開発者が修正を入れる。報告したのは、AI 企業 Anthropic の研究者
  • 10月15日:CVE 番号が付き、公表
  • 10月24〜30日:Amazon Linux、SUSE、Debian などが順に修正版を公開
  • 10月27日ごろ:Anthropic が「サーバーを外から乗っ取る攻撃に成功した」と発表。攻撃の道具は公開していません
  • 10月30日:Red Hat が特別の注意喚起(RHSB-2026-016)を出し、深刻度を最高の「Critical」に
  • 11月1日:Red Hat Enterprise Linux 8 / 9 / 10 の修正版を公開
  • 11月3日時点:Ubuntu は「準備中」。米 CISA の「悪用中」のリストには入っていません
「ほぼすべての Linux」って…うちのサーバーも全部ですか?

そう考えて動け!

Web サイトを置いているサーバー、メールのサーバー、社内のファイルサーバー、ネットワーク機器——中身が Linux のものは山ほどある。外から接続を受け付けていれば、ログインなしで届くんだ。

しかも10年前の版から入っていた。「古いから関係ない」は通用しないぞ!

どんな問題があるか

  • サーバーを丸ごと乗っ取られるおそれ:カーネルは OS の一番奥です。ここを破られると、最高の権限(root)で何でもできてしまいます。Red Hat は「確実に乗っ取るには高度な技術が要る」としていますが、研究者は実際に成功させています
  • サーバーを止められるおそれ:乗っ取りまでいかなくても、カーネルを落として再起動させることはより簡単です
  • ネットにつながる機器も対象:VPN 装置、NAS、ルーターなど、中身が Linux の機器も、メーカーの更新を待つ必要があります
  • 再起動が必要:カーネルの修正は、入れただけでは効かず、再起動して初めて効きます。止められないサーバーほど後回しになりがちです

評価が分かれている点

深刻度は、Linux の開発チームが付けた CVSS 9.8 が広く使われています。一方で、SUSE や Amazon は「攻撃が難しい」として 8.1 にしています。ただ、どの会社も「重要以上」の扱いで、急ぐべきことに変わりはありません。

Go で作ったサーバーは要注意

Anthropic の攻撃は、MPTCP(複数の回線をまとめて使う TCP の仕組み)を使ったサーバーで成功しています。プログラミング言語 Go の1.24以降は、この MPTCP を初期設定でオンにしています。Go の開発チームは「MPTCP だけの問題ではない」としつつも、注意を呼びかけています。

臨時の対処(すぐ更新・再起動できないとき)

Red Hat・Ubuntu などは、次の守りをすすめています。どれも完全な修正ではありません。

  1. おまけの情報(IP オプション)付きの TCP をファイアウォールで捨てる
    ふつうの通信では、ほぼ使われない情報です。サーバーのファイアウォール(nftables など)で、IP オプションの付いた IPv4 の TCP を落とす設定を入れます。
  2. コンテナや Kubernetes は、それぞれの中でも遮断する
    サーバー本体のファイアウォールでは、同じサーバーの中のコンテナどうしの通信は止められません。コンテナごとにも設定が必要です。
  3. MPTCP を止める
    使っていなければ、カーネルの設定(net.mptcp.enabled=0)で止めます。乗っ取りに使われた道を一つふさげます。
  4. 使っていない待ち受けを閉じる
    外に開いているポートが少ないほど、狙われる入口も減ります。

正しい対処

  1. 修正版のカーネルを入れて、再起動する
ディストリビューション状況(11月4日時点)
Red Hat Enterprise Linux 8 / 9 / 10修正済み(11月1日)
AlmaLinux 8 / 9 / 10修正済み(11月2日)
Debian 12 / 13修正済み
Amazon Linux 2 / 2023修正済み(10月24〜30日)
SUSE(SLES 15 SP4〜SP7・16.0)修正済み(SP7 は11月4日)
Ubuntu 22.04 / 24.04 ほか準備中。16.04〜20.04 は今のところ修正の予定が出ていません
Red Hat Enterprise Linux 7対象外
  1. ネットワーク機器・NAS は、メーカーの更新を確かめる
    中身が Linux の機器は、メーカーが修正版を出すまで待つしかありません。出たらすぐ当てられるよう、型番とファームウェアの版を控えておきます。
  2. Ubuntu のサーバーは、修正が出るまでファイアウォールの遮断を続ける
    修正版が出たら、すぐ入れて再起動できるよう、再起動の時間を先に決めておきましょう。
  3. サポートの終わった古い OS は移行を
    修正版が出ない版は、ずっと穴が開いたままになります。

修正済みかどうかの確かめ方

修正版の**カーネルを「入れた」ことと、「今それで動いている」**ことは別です。サーバーの担当者に、次の2つを見比べてもらいましょう。

  • 今動いているカーネルの版:uname -r というコマンドで表示されます
  • 修正版の版:たとえば Red Hat Enterprise Linux 9 なら 5.14.0-687.64.1.el9_8 以降、8 なら 4.18.0-553.182.1.el8_10 以降

uname -r の結果が修正版より古ければ、修正版を入れたのに再起動していないか、まだ入れていないかのどちらかです。クラウドの管理画面で「更新済み」と出ていても、再起動するまでは古いカーネルのままなので注意してください。

サーバーを見てくれている会社に、どう伝えればいいですか?

これを送れ!

「Linux カーネルの脆弱性 CVE-2026-98432(TCP の解放後使用、CVSS 9.8)について確認させてください。弊社のサーバーやクラウドの仮想マシンで、対象になる Linux はありますか。修正版のカーネルの適用と再起動の予定日を教えてください。Ubuntu など修正がまだのものは、IP オプション付きの TCP をファイアウォールで遮断する臨時の対策をお願いします。コンテナや Kubernetes を使っている場合は、その中の対策もお願いします。」

「更新しました」だけで安心するな。「再起動しました」まで聞け! カーネルは、再起動しないと古いまま動き続けるんだ!

まとめ

  • 原因は、TCP の「あいさつ」のときに、片付けたはずの情報を読みに行ってしまうすれ違い
  • ログインなしで外から狙える。10年近く潜んでいて、ネットにつながる Linux のほぼすべてが対象
  • つなぎは IP オプション付きの TCP の遮断・MPTCP の停止、正しい対処は修正版カーネルの適用と再起動
  • Ubuntu はまだ準備中。VPN 装置や NAS など、中身が Linux の機器も忘れずに

出典

← セキュリティニュースの一覧へ

シス担のミカタ メールマガジン

セキュリティの速報とシステムの最新情報をメールで受け取る

登録すると、次の配信からお届けします。配信はメールの下のリンクから、いつでも解除できます。個人情報の取り扱い