パイプライン

ストリームをデコード・板書補正・拡大縮小・合成・音声ミックス・エンコードの組み合わせ(グラフ)で加工し、別のストリームとして出す機能です。シーンの切り替えや、資源が足りないときのデグレード(処理の一部を外して動かし続けること)の設定も説明します。

加工と字幕

このページの見出し
  1. 仕組み
  2. API
  3. グラフの書き方
  4. 処理ノード
  5. 例: ピクチャー・イン・ピクチャー
  6. 動作中の操作(control)
  7. デグレード(degrade)
  8. 関連するページ

パイプラインは、ストリームを受け取って加工し、結果を別のストリームとして出す機能です。講義の配信なら、板書のカメラを正面から見た形に補正し、その右下に講師の映像を小さく重ね(ピクチャー・イン・ピクチャー)、AV1 に変換して流す、といったことができます。OBS のようなシーンの切り替えや音量のフェーダーも、配信中に API から操作できます。

処理の内容はグラフで書きます。デコード、板書の補正、拡大縮小、切り抜き、合成、音声のミックス、エンコードといった部品を矢印でつないだもので、矢印をたどって元に戻る経路があってはいけません(こうした形を DAG と呼びます)。以下、グラフの部品(JSON の nodes の各要素)を処理ノードと呼びます。SENCA のサーバー(senca-node)を指す「ノード」とは別物です。

作っただけでは動きません。desired_state の既定は stopped なので、動かすときは "running" を指定してください。

例で使う API・TOKEN・H は、取り込みと再生 と同じです。

仕組み

グラフは senca-codec-worker(権限を絞った別プロセス)の中で動き、デコードした生のフレームがこのプロセスの外に出ることはありません。senca-codec-worker のないノードではパイプラインは動かず、GET /capabilities の pipelines が false になります。

source は SENCA のストリームから AU(エンコード済みの 1 フレーム分のデータ)を読み、sink は処理した結果の AU を出力先のストリームに配信者として送ります。出力先はふつうのストリームなので、HLS・録画・出力・字幕にそのまま使えます。ただし、出力先に別の配信者がつながっているとパイプラインは出力できません。

パイプラインはグリッドのワークロード(pipeline:{id})で、入力のストリームを受けているノードに優先して割り当てられます(クラスターとグリッド を参照)。処理のプロセスが異常終了したり処理に失敗したりすると observed_state が error になり、1・2・4…32 秒と間隔を空けながら起動し直します。

API

パイプラインを操作する API です。

操作リクエスト権限
作成POST /pipelines {name, graph, desired_state?, placement?}stream:write
一覧GET /pipelines?limit&cursorstream:read
取得GET /pipelines/{id}stream:read
変更PATCH /pipelines/{id} {name?, graph?, desired_state?, placement?}(If-Match が必須)stream:write
削除DELETE /pipelines/{id}stream:write
検証POST /pipelines/{id}/validate(本文で別のグラフを渡せます。省略すると、保存してあるグラフを検証します)stream:read
動作中の操作POST /pipelines/{id}/controlstream:write

name の決まりはストリームの名前と同じで、テナントの中で重複できません。パイプラインは 1 つのテナントで 100 個まで作れます。desired_state の既定は stopped です。

グラフは作成と変更のたびに検証します。source・sink に書くストリームは、同じテナントのものでなければなりません。graph を変更するとパイプラインを止めて新しいグラフで起動し直すので、その間は出力が途切れます。

応答に入るフィールド:

フィールド内容
observed_state今の状態(starting・running・error・stopped)
last_error直近のエラー
plan検証のときに見積もった、必要な資源
status・meters処理の状態と、音量などのメーターの値(既定では 1 秒に約 10 回更新)
placement・placement_status割り当ての指定と結果

検証に失敗すると problem+json でエラーが返り、details.issues に [{code, node, message}] が入ります。ステータスは、デバイスが足りないとき(issues に CAPACITY_UNAVAILABLE があるとき)だけ 503 CAPACITY_UNAVAILABLE(retryable: false)で、ほかは 400 INVALID_CONFIG です。

issues[].code の意味:

issues[].code意味
MALFORMEDJSON として読めない、存在しないフィールドがある、version が 1 でない、または 16 MiB を超えている
INVALID_PARAM値が範囲の外にある、または書き方が正しくない(ID の書き方も含む)
DUPLICATE_ID同じ id の処理ノードが 2 つある
UNKNOWN_REFERENCE存在しない処理ノード・ポート・シーン・画像を参照している
TYPE_MISMATCHつないだポートの型が合わない(エンコード済みのデータを合成に入れた、映像を Opus でエンコードしようとした、sink に生のフレームを入れた、など)
CYCLE矢印をたどると元に戻る経路がある
UNCONSUMED_OUTPUT終端(sink・snapshot_on_change)以外の出力が、どこからも使われていない(source は書いたトラックごとに、compose は program について調べます)
POLICY_REJECTEDロイヤリティフリーのコーデックに限っているのに、H.264・H.265・AAC を使っている(変換せずにそのまま通す場合も含む)
UNSUPPORTED_CODECAAC をデコード・エンコードしようとした、または知らないコーデックを指定した
CAPACITY_UNAVAILABLEH.264/H.265 のハードウェアがない、その解像度に対応するエンコーダー・デコーダーがない、またはハードウェアで同時に使えるセッションの数を超える
LIMIT_EXCEEDED処理ノードの数、解像度、画像・シーン・入力の数の上限を超えている

source か sink のストリームが 1 つでも codec_profile: royalty_free であれば、グラフ全体を、ロイヤリティフリーのコーデックだけを使うものとして検証します。

グラフの書き方

グラフの JSON はこの形です。

{"version": 1, "options": {...}, "nodes": [ {"type": "...", "id": "...", ...}, ... ]}

version は 1 で、知らないフィールドがあれば拒否します。id は英数字・_・- からなる 1〜64 文字で、処理ノードは 256 個まで置けます。解像度は縦横とも 2 以上、最大 7680×4320、fps は 240 まで(合成のキャンバスは 120 まで)です。

ある処理ノードの出力を別の処理ノードにつなぐときは、"処理ノード" か "処理ノード.ポート" と書きます。source だけはポートを省けないので、cam.video・cam.audio のように書きます。compose のポートは program(既定)と preview、そのほかはすべて out で、省略できます。

ポート(処理ノードの出入り口)には型があり、合わないものはつなげません。

型出力する処理ノード
エンコード済みの映像・音声(コーデック付き)source(video・audio)、encode
生の映像decode(映像)・board・scale・crop・compose
生の音声(48 kHz)decode(音声)・audio_mix(48 kHz ステレオ)

options(全体の設定)

項目既定範囲意味
clockrealtimerealtime・input出力のタイミングの決め方です。realtime は、実際の時間に合わせて進めます(ライブ向け)。input は、入力のタイムスタンプに合わせて進め、すべての入力がそろってから出力します(ファイルの処理や試験向け)
overflowdropdrop・blockキューがいっぱいのときの動きです。drop は、古いものを捨てます(映像は次のキーフレームまで捨てます)。block は、上流を待たせます(block_timeout_ms を超えたら捨てます)
latency_ms1000〜10000入力の届くタイミングのばらつきを吸収するための遅延です。合成とミキサーは、この分だけ前の時刻のフレームを描きます
missing_timeout_ms2000100〜60000入力が届かないときに、途切れたと判断するまでの時間です
block_timeout_ms200010〜60000block で待つ時間の上限です
input_queue_aus2568〜100000入力の映像の AU をためておくキューの長さです
frame_queue81〜256生のフレームをためておくキューの長さです(処理ノードの入力ごと)
status_interval_ms1000 または 20〜60000状態とメーターを知らせる間隔です。0 にすると知らせません
commit_timeout_ms10000100〜600000新しいグラフへの切り替えを待つ時間の上限です。管理 API の操作では使いません

処理ノード

source(入力)

項目必須意味
streamはい入力にする SENCA のストリームの ID です
video・audioどちらか一方は必須使うトラックです。{codec, track?, width?, height?, fps?, sample_rate?, channels?} の形で書きます

codec には、h264・h265・av1・vp8・vp9・opus・aac など、入力のストリームに実際に届くコーデックを書きます。track を省くと、その種類の最初のトラックを使います。width・height・fps・sample_rate(8000〜192000)・channels(1〜8)は、検証と必要な資源の見積もりにだけ使います。

decode(デコード)

エンコード済みの入力を、生の映像や音声に戻します。書き方は {input, max_width?, max_height?, threads?} です。max_width・max_height は受け付ける解像度の上限(既定 3840×2160)、threads はソフトウェアのコーデックが使うスレッドの数(0 で自動、64 まで)です。AAC はデコードできず、UNSUPPORTED_CODEC になります。

board(板書の補正)

斜めから撮ったホワイトボードや黒板を、正面から見た形に直して読みやすくします。書き方は {input, params} です。

params の項目既定意味
modewhiteboardホワイトボード(whiteboard)か黒板(blackboard)かを指定します
cornersなし板の 4 隅の座標です。左上・右上・右下・左下の順に、入力の画素単位で [[x,y],…] と書きます
auto_detectfalse4 隅を自動で見つけます(見つかるまで毎フレーム試します)
redetect_frames04 隅を見つけ直す間隔(フレーム数)です。0 にすると見つけ直しません
output_width・output_height1280・720出力の大きさです(16 以上)。corners も auto_detect も指定しない場合は、入力の大きさのままです
enhancetrue照明のむらや反射を補正し、文字をくっきりさせます
stroke_gain・chroma_gainなし文字の濃さと、文字の色の強さの倍率です(0〜10)
glare_suppressionなし照明の反射を抑えるかどうかです(true・false)
invert_to_whitefalse黒板を、白地に暗い文字の画像に変換します
clahefalse明るさに CLAHE(部分ごとにコントラストを整える処理)をかけます

scale・crop

scale(拡大縮小)は {input, width, height, filter?} と書きます。filter は nearest・bilinear(既定)・bicubic・lanczos3・area から選びます。

crop(切り抜き)は {input, x, y, width, height} を入力の画素単位で書きます。大きさは偶数に切り下げます。入力の大きさがわかっていれば、範囲からはみ出したときに INVALID_PARAM になります。

compose(合成)

項目既定意味
inputs(必須)シーンの中で使う名前と、その映像を出す上流の処理ノード(生の映像)の対応です。32 個まで
canvas(必須)出力する画面の設定です。{width, height, fps_num, fps_den?(1), background?("#000000")} の形で書きます。幅と高さは偶数にします
images{}ロゴなどの静止画です。名前と {png_base64} か {jpeg_base64} の対応で書きます。32 枚まで、1 枚あたり 8 MiB(base64 の状態で)までです。検証のときに、実際にデコードして確かめます
scenes(必須)シーンの名前と {layers: [...]} の対応です。1〜64 個
program(必須)出力するシーン(本番に出す画面)です
previewなしpreview ポートに描くシーン(次に出す画面の下見)です
transition{kind: cut, duration_ms: 0}take で使う、既定の切り替えの効果です。kind は cut・fade・wipe_left・wipe_right のどれかで、duration_ms は 60000 までです
missing{hold_ms: 2000, slate_color: "#000000"}入力が届かないときの表示です。hold_ms(600000 まで)の間は最後のフレームを出し続け、その後は代わりの画面(スレート)を出します。slate_image に images の名前を書くと、色の代わりにその画像を出します
threads0描画に使うスレッドの数です(0 で CPU の数、64 まで)

入力・画像・シーンの名前は、英数字・_・- を使った 1〜64 文字です。

シーンは、重ねて描くレイヤー(layers[])でできています。各レイヤーに描くものは、source(inputs の名前)・image(images の名前)・color(#RRGGBB)のどれか 1 つです。レイヤーの項目:

項目既定意味
x・y・width・height(必須)画面の上での位置と大きさです
crop0{left, top, right, bottom} の形で、各辺から割合で切り取ります
fitcontain枠への収め方です。stretch(引き伸ばす)・contain(全体を収める)・cover(枠を埋める)のどれかです
z0重なりの順番です(大きいほど手前)
opacity1.0不透明度です(0〜1)
corner_radius0角の丸みの半径です(4096 まで)
borderなし枠線です。{width (512 まで), color} の形で書きます
visibletrue表示するかどうかです
filterbicubic拡大縮小に使うフィルターです

audio_mix(音声のミックス)

項目既定意味
inputs(必須)名前と {from, gain_db?(0), mute?, solo?, pan?(0), delay_ms?(0)} の対応です。from には生の音声を指定します。1〜32 個
master_gain_db0全体の音量(dB)です(-120〜24)
limitertrue音が大きくなりすぎないように抑えるかどうかです

gain_db(音量、dB)は -120〜24、pan(左右の位置)は -1〜1、delay_ms(遅らせる時間)は 0〜5000 です。出力は 48 kHz のステレオです。

encode(エンコード)

項目既定意味
input(必須)生の映像か、生の音声です
codec(必須)映像は av1・vp8・vp9・h264・h265、音声は opus です
bitrate_kbps(必須)ビットレート(kbps)です(1〜800000)
gop2 秒分キーフレームの間隔です(フレーム数、100000 まで)
low_latencytrue遅延を小さくする設定でエンコードするかどうかです
rate_controlcbrビットレートの決め方です。cbr(一定)か vbr(可変)です
width・height入力の大きさ出力の大きさです。2 つとも指定します。大きさの違うフレームは拡大縮小します
frame_ms20Opus の 1 パケットの長さ(ミリ秒)です。2.5・5・10・20・40・60 のどれかです
threads0使うスレッドの数です(0 で自動、64 まで)

h264・h265 は GPU(NVENC・oneVPL・AMF)がないと CAPACITY_UNAVAILABLE になります。ほかは、av1 が SVT-AV1(かハードウェア)、vp8・vp9 が libvpx、opus が libopus でのエンコードです。AAC のエンコードには対応していません(コーデックと特許 を参照)。

snapshot_on_change(板書の変化を静止画に保存)

生の映像を見張り、板書などの内容が変わって落ち着いたところで JPEG を保存します。先生が板書を書き足して手を離したタイミングで 1 枚、という具合です。書き方は {input, params} で、sink のないグラフでも使えます。

保存先はストリームではなくパイプラインごと({data-dir}/pipeline-snapshots/{pipeline_id}/)です。処理ノードごとに params.keep 枚まで残し、超えたら古いものから消します。パイプラインを削除すると、動かしていたノードにある静止画も一緒に消えます。

保存した静止画を扱う API です。

操作API権限結果
一覧GET /pipelines/{id}/snapshotsstream:read{"items":[{id, taken_at, reason: "board_change", node, width, height, bytes, changed_fraction}]}(古い順。node は処理ノードの ID)
1 枚を取得GET /pipelines/{id}/snapshots/{snapshot_id}stream:readJPEG
削除DELETE /pipelines/{id}/snapshots/{snapshot_id}stream:write204

静止画は、パイプラインを動かしているノードのディスクにあります。クラスターでは、そのノード(placement_status.node_name)の API に問い合わせてください。

params の項目:

params の項目既定範囲と意味
modewhiteboardホワイトボード(whiteboard)か黒板(blackboard)かを指定します
enabledtruefalse にした場合は、動作中の操作 snapshot で始めます
analysis_fps2.01 秒に何フレームを調べるかです。0〜120(0 ではすべてのフレームを調べます)
stable_frames3何フレーム続けて変化がなければ落ち着いたとみなすかです。1〜10000
change_fraction0.004画面のどれだけの割合が変われば変化とみなすかです。0 より大きく 1 より小さい値
jpeg_quality85JPEG の画質です。1〜100
keep1000残す枚数です。1〜10000

sink(出力)

{inputs, stream} と書きます。stream は出力先のストリームの ID です。inputs にはエンコード済みの映像 1 つと音声 1 つまで(1〜2 個)を並べ、その順にトラック番号 0、1 が付きます。source のトラックを直接つなげば、再エンコードせずにそのまま通ります。

出力先のストリームは、HLS のコンテナーがそのコーデックを入れられる設定にしておいてください。たとえば AV1・VP9 を出すなら hls.container: fmp4 が必要です(取り込みと再生 を参照)。

例: ピクチャー・イン・ピクチャー

板書のカメラ(jb)を画面いっぱいに映し、講師(jt)を右下に小さく重ねます。音声は講師のものを Opus に、合成した映像は AV1 にエンコードして jout に出します。3 つのストリームは、どれも codec_profile: royalty_free・hls.container: fmp4 で作ります。

for n in jt jb jout; do
  curl -s -X POST "$API/streams" "${H[@]}" -d '{"name":"'$n'","codec_profile":"royalty_free","hls":{"container":"fmp4"}}' > $n.json
done
id() { python3 -c "import json;print(json.load(open('$1.json'))['id'])"; }

cat > graph.json <<EOF
{"version":1,"options":{"clock":"realtime"},"nodes":[
 {"type":"source","id":"t","stream":"$(id jt)","video":{"codec":"vp9"},"audio":{"codec":"opus"}},
 {"type":"source","id":"b","stream":"$(id jb)","video":{"codec":"vp9"}},
 {"type":"decode","id":"dt","input":"t.video"},
 {"type":"decode","id":"db","input":"b.video"},
 {"type":"decode","id":"at","input":"t.audio"},
 {"type":"compose","id":"prod","inputs":{"board":"db","teacher":"dt"},
  "canvas":{"width":640,"height":360,"fps_num":30},
  "scenes":{
    "pinp":{"layers":[{"source":"board","x":0,"y":0,"width":640,"height":360},
                      {"source":"teacher","x":440,"y":250,"width":192,"height":108,"z":1}]},
    "teacher":{"layers":[{"source":"teacher","x":0,"y":0,"width":640,"height":360}]}},
  "program":"pinp","preview":"teacher","transition":{"kind":"fade","duration_ms":300}},
 {"type":"audio_mix","id":"mix","inputs":{"mic":{"from":"at","gain_db":0}}},
 {"type":"encode","id":"venc","input":"prod","codec":"av1","bitrate_kbps":800,"gop":30},
 {"type":"encode","id":"aenc","input":"mix","codec":"opus","bitrate_kbps":96},
 {"type":"sink","id":"out","inputs":["venc","aenc"],"stream":"$(id jout)"}]}
EOF

python3 -c "import json;print(json.dumps({'name':'pinp','graph':json.load(open('graph.json')),'desired_state':'running'}))" > body.json
curl -s -X POST "$API/pipelines" "${H[@]}" --data-binary @body.json

jt と jb に VP9(と Opus)で配信すると jout が配信中になり、再生 URL を開けば合成した結果が見られます。

動かすには、VP9 のデコード(libvpx)、AV1 のエンコード(SVT-AV1)、Opus のエンコード(libopus)のライブラリが要ります。入れ方は コーデックと特許 を参照してください。

動作中の操作(control)

配信中にシーンを切り替えたり音量を変えたりするには、POST /pipelines/{id}/control に操作の JSON を送ります。操作の種類は "op" で選び、知らないフィールドがあれば 400 です。合成とミキサーへの操作は、次の出力フレームの切れ目で反映されます。

上から順に、下見のシーンを本番に出す、ワイプで pinp に切り替える、マイクを 6 dB 下げる、という操作です。

curl -s -X POST "$API/pipelines/$PID/control" "${H[@]}" -d '{"op":"take","node":"prod"}'
curl -s -X POST "$API/pipelines/$PID/control" "${H[@]}" -d '{"op":"switch_program","node":"prod","scene":"pinp","transition":{"kind":"wipe_left","duration_ms":500}}'
curl -s -X POST "$API/pipelines/$PID/control" "${H[@]}" -d '{"op":"set_audio","node":"mix","input":"mic","gain_db":-6}'

node には操作する処理ノードの id を書きます。使える操作:

op項目意味
switch_programnode、scene、transition?本番に出すシーンを切り替えます(transition を省略すると、効果なしで切り替えます)
set_previewnode、scene下見(プレビュー)のシーンを設定します
takenode、transition?下見のシーンを本番に出します(効果の既定は合成の transition)。下見には、それまで本番に出ていたシーンが入ります
update_layernode、scene、layer(番号)、patchレイヤーの一部を変更します。patch に書けるのは x・y・width・height・z・opacity・visible・source です
set_scenenode、scene、layersシーンを作るか、置き換えます
set_audionode(audio_mix)、input、gain_db?・mute?・solo?・pan?・delay_ms?音声の入力の設定を変えます(指定した項目だけ)
set_masternode、gain_db全体の音量を設定します
snapshotnode(snapshot_on_change)、enabled変化の検出を始めたり止めたりします
request_keyframenode?キーフレームを要求します(node を省略すると、映像のエンコードすべてに要求します)

成功すると 200 {"ok": true, "reply": {...}} が返ります。パイプラインが動いていなければ 409、存在しない処理ノードやシーンを指定したなど内容に誤りがあれば 400 で、理由は details.reason に入ります。

ここでの操作は、動いているパイプラインにだけ効きます。set_scene や update_layer で変えても保存してあるグラフはそのままなので、起動し直すと元に戻ります。変更を残したいなら PATCH でグラフを書き換えてください。なお prepare・commit・rollback(グラフの切り替えに使う内部の操作)はこの API からは使えず、400 になります。

デグレード(degrade)

デバイスやノードの資源が足りなくなったとき、グリッドはパイプラインを止めずに、一部の処理ノードを外して動かし続けられます。どこまで外すかは、あらかじめ決めておくデグレードレベルで指定します。次の例は、板書の入力を外すレベルを 1 つ設定しています。

curl -s -X PATCH "$API/pipelines/$PID" "${H[@]}" -H "If-Match: $ETAG" -d '{
  "placement": {"priority": "high", "degrade": [
    {"label": "no-board", "disable": ["b"]}
  ]}
}'

placement.degrade は、品質の高い順に並べたレベルの配列(8 レベルまで)で、各レベルを {label, disable} で書きます。label は重複できず、full(何も外さないレベル 0 の名前)も使えません。disable は空にできず、グラフにある処理ノードの ID しか書けません。

レベルは積み重なります。レベル 2 では、レベル 1 とレベル 2 の両方の disable が外れます。

指定した処理ノードを外すと、入力が全部なくなった下流の処理ノードも一緒に外れます。複数の入力を持つ sink・compose・audio_mix のように入力の一部だけが外れるものは、その入力を除いて残ります。compose では、外れた入力を使うレイヤーが各シーンから取り除かれます。

外すときは上流(source など)から指定してください。 外したあとのグラフも検証するので、下流だけを外すと上流の出力が宙に浮き、UNCONSUMED_OUTPUT で動きません。上の例では板書の source(b)を外しているので、つながっている decode(db)も外れ、合成から板書のレイヤーが消えて講師だけの映像になります。

レベルが変わるとパイプラインは新しいグラフで起動し直し、結果が placement_status(state: degraded、level、level_label)に出ます。各レベルで必要な資源(CPU・メモリ・GPU のセッション)は、処理ノードを外したあとのグラフから見積もります。

どのレベルが選ばれるか、優先度、デバイスが止まったときの動きについては、クラスターとグリッド を参照してください。

関連するページ

この文書の原文は、リポジトリの docs/guide/ja/07-pipelines.md にあります。内容は現在の版(v0.0.1)に合わせています。