セキュリティフレームワーク・モデル

BSIMM(Building Security In Maturity Model) びーしむ

ソフトウェアセキュリティ成熟度モデルセキュアSDLCアプリケーションセキュリティソフトウェア開発セキュリティプログラム
BSIMMについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

BSIMMは「世の中の優れた企業がソフトウェアのセキュリティ対策をどのくらいやっているか」を調査してまとめた”通知表の物差し”だよ。自分たちの開発チームのセキュリティ活動を、その物差しに照らして「うちはどのレベル?」と確認できるんだ!


BSIMMとは

BSIMM(Building Security In Maturity Model)は、実際に多くの企業・組織がソフトウェア開発においてどのようなセキュリティ活動を実施しているかを調査・観察し、その結果をモデル化したものです。「あるべき理想」ではなく「実際に行われていること」をデータとして集めた点が最大の特徴で、実態に基づくベンチマーク(比較基準)モデルとも呼ばれます。

BSIMMはGary McGraw氏らによって2008年に初版が公開され、以来バージョンアップを重ねながら、金融・保険・テクノロジー・医療など幅広い業界のデータが蓄積されています。自社のソフトウェアセキュリティプログラム(SSP)の現状を把握し、業界他社と比較したり、改善のロードマップを描いたりするために使われます。

ITシステムの発注側企業にとっては、「ベンダーや開発パートナーがどの程度のセキュリティ活動を行っているか」を評価・要求するための共通言語としても機能します。「うちのセキュリティ活動はちゃんとしてる?」という問いへの客観的な答えを出すための羅針盤と言えるでしょう。


BSIMMの構造:ドメインとプラクティス

BSIMMは全体を 4つのドメイン(領域) に分類し、さらにその下に 12のプラクティス(実践項目)、そして具体的な 113のアクティビティ(活動) で構成されています(BSIMM v13時点)。

ドメインプラクティス概要
ガバナンス(Governance)戦略とメトリクス / コンプライアンスとポリシー / トレーニングセキュリティプログラムの方針・指標・教育
インテリジェンス(Intelligence)攻撃モデル / セキュリティの特徴と設計 / 規格と要件脅威情報の収集・セキュリティ要件の整備
SSDL接点(SSDL Touchpoints)アーキテクチャ分析 / コードレビュー / セキュリティテスト開発ライフサイクルの各フェーズへのセキュリティ組み込み
デプロイメント(Deployment侵入テスト / ソフトウェア環境 / 構成管理と脆弱性管理リリース・運用環境のセキュリティ活動

各アクティビティには レベル1〜3 の成熟度段階があり、数値が高いほど高度な実践を示します。自社が「どのアクティビティを実施しているか」をチェックすることで、現在の成熟度スコアが算出されます。

「BSimm」の覚え方

Build Security In」=「セキュリティを中に組み込む」+「MM=成熟度モデル」と分解して覚えましょう。「ビルドしながらセキュリティをインサイドに」というイメージです。

BSIMMのデータ規模(BSIMM v13)

  • 調査対象組織数:130社以上
  • 業種:金融・保険・テクノロジー・医療・小売・IoTなど多岐にわたる
  • 累積アクティビティ観察件数:数万件以上のデータポイント
  • 公開サイクル:年1〜2回のペースでアップデート

歴史と背景

  • 2001年頃:ソフトウェアのセキュリティ問題が多発し、マイクロソフトが「Trustworthy Computing」を宣言。開発プロセスへのセキュリティ組み込みが業界課題となる
  • 2004年:Gary McGraw氏が著書 Software Security を執筆し、「ソフトウェアセキュリティタッチポイント」の概念を提唱
  • 2008年:Cigital社(現Synopsys)がBSIMM初版(v1)を公開。9社の観察データをもとに作成
  • 2012〜2016年:BSIMM v4〜v7でデータ対象が急拡大。金融・FinTech企業の参加が増加
  • 2019年:BSIMM v10、100社超のデータを収録しグローバルな標準ベンチマークとして定着
  • 2022年:BSIMM v13公開。クラウドネイティブDevSecOps対応のアクティビティが強化される
  • 現在:Synopsys社が管理・運営し、毎年観察データを更新。多くの大企業がセキュリティ成熟度評価に採用

似たモデルとの比較:BSIMM vs SAMM vs SDL

ソフトウェアセキュリティに関するフレームワークはいくつか存在します。それぞれの違いを理解することが大切です。

項目BSIMMOWASP SAMMMicrosoft SDL
アプローチ観察・実態ベース(記述的)理想・目標ベース(規範的)理想・目標ベース(規範的)
主な用途ベンチマーク・現状把握改善ロードマップ設計開発プロセス標準化
管理主体Synopsys社OWASP財団(OSSコミュニティ)Microsoft
対象規模中〜大規模組織向け小〜大規模まで対応主にMicrosoft製品/Windows生態系
無償公開無償(報告書はサイトで取得)完全無償・OSSライセンス無償(ドキュメント公開)
更新頻度年1〜2回(調査ベース)バージョン単位(不定期)ドキュメント随時更新
BSIMMの4ドメイン構造 ガバナンス 戦略とメトリクス コンプライアンス トレーニング インテリジェンス 攻撃モデル 設計の特徴 規格と要件 SSDL接点 (開発ライフサイクル) アーキテクチャ分析 コードレビュー セキュリティテスト デプロイメント 侵入テスト ソフトウェア環境 構成管理・脆弱性管理 各アクティビティは レベル1(基礎)→ レベル2(中級)→ レベル3(高度)の3段階で評価

実務での活用ポイント: BSIMMは「何をすべきか」を指図するのではなく、「業界標準と比べて自分たちはどこにいるか」を示します。ベンダー選定時に「BSIMMのどのレベルを目標にしているか」を聞くことで、相手のセキュリティ成熟度を定量的に把握できます。


関連する規格・RFC

規格・文書内容
OWASP SAMM v2.0ソフトウェアセキュリティ保証成熟度モデル。BSIMMと相補的に使われることが多いOSSフレームワーク
NIST SP 800-64セキュアSDLCに関するNISTガイドライン。BSIMMのアクティビティとマッピング可能
ISO/IEC 27034アプリケーションセキュリティに関する国際規格。BSIMMとの整合性が参照されることがある

関連用語