ゼロトラスト・SASE

ZTNA(Zero Trust Network Access) ぜっとてぃーえぬえー

ゼロトラストVPNアイデンティティマイクロセグメンテーションSASEアクセス制御
ZTNAについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

「社内ネットワークにつながったら何でもOK」じゃなくて、「誰が・どのデバイスで・何にアクセスするか」を毎回ちゃんと確認してから、必要な部分だけ開ける鍵の仕組みだよ。VPNの「一度入ったら社内全部見放題」を卒業した、現代版のセキュリティアクセス方式なんだ!


ZTNAとは

ZTNA(Zero Trust Network Access) とは、「何も信頼しない(Zero Trust)」という考え方をネットワークアクセスに適用したセキュリティの仕組みです。従来のVPNが「社内ネットワークに接続できた人・端末は信頼する」という前提だったのに対し、ZTNAは接続のたびに「誰が・どの端末で・何の目的で・今どこから」アクセスしようとしているかを検証し、許可されたリソースだけを最小限に開放します。

テレワークの普及やクラウドサービスの多様化によって、「社内=安全、社外=危険」という境界線が意味をなさなくなりました。ZTNAはこの変化に対応するため、ネットワークの場所ではなくアイデンティティとコンテキスト(状況)を信頼の根拠とします。仮に社内からのアクセスであっても、毎回ポリシーに照らして検証するのが大きな特徴です。

ZTNAは単体の製品というより、セキュリティ設計の考え方(ゼロトラスト)を実装するための主要技術のひとつとして位置づけられています。クラウドセキュリティのフレームワーク「SASE(Secure Access Service Edge)」の中核コンポーネントでもあり、多くのベンダーがZTNAをクラウド型サービスとして提供しています。


ZTNAの仕組みと構成要素

ZTNAは主に以下の3つの要素が連携して動作します。

構成要素役割具体例
IDプロバイダー(IdP)ユーザーの本人確認・認証Azure AD、Okta、Google Workspace
ポリシーエンジンアクセス可否を判定するルール管理「営業部員は営業システムのみ許可」など
コネクター/プロキシアプリケーションとユーザーを安全につなぐ中継役Cloudflare Access、Zscaler ZPA など

アクセスフローのイメージ

ユーザー(社外・社内問わず)
  ↓ ①アクセス要求
ZTNAサービス(クラウド)
  ↓ ②本人確認(MFA含む)+端末状態チェック
ポリシーエンジン
  ↓ ③条件を満たしたリソースだけを開放
特定のアプリ・システムのみ
  ※ネットワーク全体へのアクセスは与えない

覚え方:「玄関ではなく部屋のカギ」

VPNは「玄関ドアのカギ」で、一度開けたら家中どこでも歩き回れます。ZTNAは「部屋ごとのカギ」で、必要な部屋だけ、必要な人にだけ開けます。攻撃者が侵入しても動き回れる範囲(横移動)を最小限に抑えられるのが強みです。

ZTNAの2つのアーキテクチャモデル

モデル特徴向いているケース
エンドポイント起点型ユーザー端末にエージェントをインストール社員端末の管理が徹底できる企業
サービス起点型アプリ側にコネクターを置き、エージェント不要BYODや外部パートナーが多い環境

歴史と背景

  • 2010年 — Forrester Researchのアナリスト John Kindervag が「Zero Trust」モデルを提唱。「信頼は与えるものではなく、検証するものだ」という概念が生まれる
  • 2011〜2014年 — Googleが社内で「BeyondCorp」という独自のゼロトラスト実装を開始。VPNなしで社員がどこからでも安全に業務できる環境を構築
  • 2017年 — Googleが「BeyondCorp」の実装詳細を論文として公開。業界全体がゼロトラストを本格的に研究・採用し始める
  • 2019年 — Gartnerが「ZTNA」という用語を正式に定義。SASEフレームワークの重要コンポーネントとして位置づけ
  • 2020年 — NISTが「Zero Trust Architecture(SP 800-207)」を公開し、標準化が加速
  • 2020〜現在 — コロナ禍によるテレワーク爆発的普及でVPNの限界が露呈。ZTNAへの移行が急速に進む。Cloudflare、Zscaler、Palo Alto Networks など多数のベンダーがZTNAサービスを提供

VPNとの比較・ZTNAが選ばれる理由

従来のVPNとZTNAは「リモートアクセスを安全にする」という目的は同じですが、アプローチが根本的に異なります。

VPN vs ZTNA — アクセスの考え方の違い 従来のVPN ユーザー (社外) VPN接続 認証(1回) 社内ネットワーク全体 つながればすべてのリソースへアクセス可 システムA (人事) システムB (財務) システムC (営業) ⚠️ 侵入されると横移動が容易 ⚠️ 帯域・速度の問題も出やすい ZTNA ユーザー (社外・社内問わず) ポリシー検証 ID・端末・場所・時刻 (毎回チェック) ZTNAプロキシ 許可されたリソースだけを中継 システムC (営業のみ) システムA 🔒 非表示 システムB 🔒 非表示 ✅ 許可外のリソースは存在すら見えない ✅ 最小権限の原則を実現

ZTNAがVPNより優れる主なポイント

比較項目従来のVPNZTNA
アクセス範囲ネットワーク全体許可されたアプリのみ
信頼の根拠ネットワークの場所ID・端末・コンテキスト
横移動リスク高い(侵入後に動き回れる)低い(見えるリソースが限定)
クラウド対応弱い(バックホール問題)強い(クラウドネイティブ
管理の複雑さVPN機器の保守が必要SaaS型なら機器不要
ユーザー体験遅くなりがち最適経路を自動選択

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
NIST SP 800-207Zero Trust Architectureの定義・設計原則を定めた米国国立標準技術研究所の標準文書
RFC 8996TLS 1.0/1.1の廃止勧告。ZTNAが前提とするTLS 1.2以上の通信の根拠
RFC 8446TLS 1.3の仕様。ZTNAで使われる暗号化通信の最新標準

関連用語

  • ゼロトラスト — ZTNAの思想的な土台。「何も信頼しない」セキュリティモデル
  • SASE — ZTNAを含むクラウド型セキュリティ統合フレームワーク
  • VPN — ZTNAが代替・補完しようとしている従来型リモートアクセス技術
  • IAM(アイデンティティ管理) — ZTNAのアクセス判定を支える「誰が」を管理する仕組み
  • MFA(多要素認証) — ZTNAの認証で組み合わせて使われるセキュリティ強化手段
  • マイクロセグメンテーション — ネットワークを細かく分割してZTNAと組み合わせる手法
  • EDR — ZTNAがアクセス可否判定に使う端末の健全性チェックと連携する技術
  • SSO(シングルサインオン) — ZTNAと組み合わせてユーザー体験を損なわずに認証を強化する仕組み