SDN・ネットワーク仮想化

ネットワークスライシング ねっとわーくすらいしんぐ

5G仮想化SDNNFVQoSネットワーク分割
ネットワークスライシングについて教えて

簡単に言うとこんな感じ!

1本の道路を「緊急車両専用レーン」「バス専用レーン」「一般車線」に仮想的に分けるイメージだよ!1つの物理的なネットワークを用途ごとに「スライス(薄切り)」して、それぞれに専用の帯域や品質を割り当てられる技術なんだ。5Gと組み合わせると特に威力を発揮するってこと!


ネットワークスライシングとは

ネットワークスライシングとは、1つの物理的なネットワークインフラを、複数の論理的に独立したネットワーク(スライス) に仮想的に分割する技術です。各スライスは、帯域幅・遅延・信頼性などの特性を個別にカスタマイズでき、あたかも専用のネットワークが存在するかのように振る舞います。

この技術は、SDN(Software Defined Networking:ソフトウェア定義ネットワーク)NFV(Network Functions Virtualization:ネットワーク機能仮想化 を組み合わせることで実現されます。物理インフラを共有しながらも、スライスごとに完全に異なる品質や優先度を設定できるため、多様なサービス要件を1つのネットワーク基盤でまかなえます。

特に5Gネットワークの文脈で注目されており、自動運転・工場自動化・動画ストリーミング・IoTデバイス管理など、まったく異なる通信要件を持つサービスを同時に提供するための鍵となる技術として位置づけられています。


ネットワークスライシングの仕組み

ネットワークスライシングは、ネットワークを3つの層に分けて管理することで成立します。

名称役割
上位サービス層各スライスに求めるサービス要件を定義(速度・遅延など)
中間ネットワークスライス層要件に応じたスライスを生成・管理・監視
下位インフラ層物理的なサーバー・回線・無線設備などの実体

代表的なスライスの種類

5Gの標準化団体3GPPでは、主に以下の用途別スライスタイプが定義されています。

スライスタイプ英語名向いているサービス
eMBBEnhanced Mobile Broadband高速大容量通信(動画・VR)
URLLCUltra-Reliable Low-Latency Communications超低遅延・高信頼(自動運転・遠隔手術)
mMTCMassive Machine-Type Communications大量IoTデバイスの同時接続(スマートメーターなど)

覚え方

スライスチーズ」をイメージしてください。1枚のチーズブロック(物理ネットワーク)を薄くスライスして、それぞれ別の料理(サービス)に使う感じです。スライスの厚さ(帯域)も用途に合わせて変えられます。


歴史と背景

  • 2010年代前半:クラウドやデータセンターの普及とともに、SDN・NFVの概念が登場。ネットワークをソフトウェアで制御するアイデアが広がる
  • 2015年頃:5G標準化の議論が本格化する中で、多様なサービス要件を1つのネットワークで満たす必要性が認識され、ネットワークスライシングの概念が注目される
  • 2017年:3GPPのRelease 15(5Gの最初の正式規格)にネットワークスライシングが組み込まれ、標準化が進む
  • 2020年:各国で5Gの商用サービスが開始。ネットワークスライシングを活用したB2B向けサービスが始まる
  • 2020年代以降:製造業・医療・交通インフラなどへの導入事例が増加。「ネットワーク as a Service」として企業向けに提供するビジネスモデルが確立されつつある

関連技術との比較・位置づけ

ネットワークスライシングは単独で存在する技術ではなく、SDN・NFVという2つの基盤技術の上に成立しています。

ネットワークスライシングを支える技術スタック ネットワークスライシング (論理ネットワークの分割・管理) 各スライスに帯域・遅延・優先度を個別設定 SDN Software Defined Networking ネットワーク制御をソフトウェア化 NFV Network Functions Virtualization ネットワーク機能を仮想化 物理インフラ層 サーバー / 回線 / 無線基地局 / スイッチ / ルーター (実際のハードウェア。複数のスライスで共有される) ▲ ネットワークスライシングはSDN・NFVの上に構築され、物理インフラを仮想分割する

VLANとの違い

VLANも似たようなものでは?」と思う方も多いですが、以下の違いがあります。

観点VLANネットワークスライシング
対象範囲主にL2(データリンク層)の分離L1〜L7まで全層をカバー
QoS制御限定的遅延・帯域・信頼性を細かく制御
柔軟性設定が静的になりがちソフトウェアで動的に変更可能
主な用途社内LAN分割5G・エンタープライズ向けサービス提供

関連する規格・RFC

規格・RFC番号内容
3GPP TS 23.5015Gシステムアーキテクチャの仕様。ネットワークスライシングのコアとなるSingle Network Slice Selection Assistance Information(S-NSSAI)を定義
3GPP TS 28.5305Gネットワークスライスの管理・運用に関する要件定義
RFC 8453SDNアーキテクチャにおけるトランスポートSDNの枠組み(ACTN)を定義。スライシングと連携するネットワーク抽象化に関連
RFC 9543ネットワークスライスに関するフレームワークを定義したIETF標準

関連用語

  • SDN(Software Defined Networking) — ネットワーク制御をソフトウェアで行う技術。スライシングの制御面を担う
  • NFV(Network Functions Virtualization)ルーターファイアウォールなどのネットワーク機能を仮想化する技術。スライシングの実装基盤
  • 5G — 第5世代移動通信システム。ネットワークスライシングが標準機能として組み込まれている
  • VLAN — 物理ネットワークを論理的に分割する旧来の技術。スライシングの前身的概念
  • QoS(Quality of Service) — 通信品質を制御・保証する仕組み。各スライスに適用される
  • 仮想化 — ハードウェアリソースをソフトウェアで抽象化する技術全般
  • クラウド — スライシングをクラウドと組み合わせることで「ネットワーク as a Service」が実現される
  • IoT — 大量デバイスを接続するmMTCスライスの主なユースケース