Webシステム発注初心者ガイド
第1話
なぜか私が「見積書システム」を作ることになった
「Excel、もう限界です」
4月のある朝、営業部の先輩からSlackが届いた。
「田中さん、見積書の件、ちょっといい?」
聞けば、営業メンバー8人が各自のパソコンにExcelファイルを持ち、それぞれ独自のフォーマットで見積書を作っているらしい。バージョン管理もなく、最新版がどれかわからなくなることもしょっちゅう。先月は金額の古いファイルをそのまま顧客に送ってしまう事故も起きていた。
「承認も、上司に直接メールで送って、返信を待って……もう何往復してるかわからないんですよね」
実は、Excelで見積書を管理している会社はすごく多いんだよね。中小企業の現場だと「まず使えればいい」でExcelを使い続けて、気づいたら属人化・バージョン混乱・ミス多発、という流れはよくあるパターンなんだ。
「困ってる」と感じたタイミングがシステム化を考えるきっかけになることが多いから、今がまさにそのとき、かもしれないね。
話を聞きながら、頭の中でざっと問題を整理してみた。
- ファイルがバラバラ:メンバーごとにフォーマットが違い、集計できない
- バージョン管理ができない:「最新版」の共有が口頭頼み
- 承認フローが属人的:誰がどこまで確認したか追えない
- 顧客ごとの単価設定が複雑:掛率・割引が担当者の記憶に依存している
これはたしかに問題だ。ではどう解決するか。
上司の一言
翌週、状況をまとめた簡単な資料を持って上司に報告した。数字も入れた。月あたりの差し戻し件数10件、承認の平均所要時間3.2日、記入ミスによる再送信コスト……。
「うん、わかった。じゃあシステム化、よろしく」
え。
情シス担当(情報システム担当)の仕事は、自分でコードを書くことじゃないよ。「社内のシステムに関する調整・判断・発注を担う」のが主な役割なんだ。
つまり、システムを「作る人」ではなく、「依頼して管理する人」。開発は外部の会社に頼むのが一般的だよ。今回やるべきことはこんな感じ:
- 何が必要かを整理する
- 開発できる会社を探して相談する
- 見積を取って発注する
- 開発の進捗を確認して受け取る
プログラムは書かなくていい!安心してね。
まずヒアリングから
「わかりました」と答えてしまったからには、動くしかない。
その日の午後、営業部のメンバー3人に30分ずつ話を聞いた。ホワイトボードにメモしながら聞いていると、だんだん輪郭が見えてきた。
見積書作成の流れ(現状)
- 担当者が社内の製品一覧Excelから品番・単価を手でコピー
- 顧客ごとの掛率を自分のメモから引っ張ってくる
- 見積書Excelに貼り付け、金額を計算
- 上司へメールで送付、確認・修正を繰り返す
- OKが出たらPDFに変換して顧客にメール
一番の問題はステップ1だった。社内には製品データベース(基幹システム)があるのに、そこから価格を毎回手動でコピーしているため、価格改定が反映されないケースが頻発していた。
製品データベースには「品番・品名・単価・在庫数」などの情報が入ってるよね。見積書を作るとき、担当者がそのDBを検索して、ほしい品目を見積システムに取り込めるようにする、というイメージだよ。
技術的には API(エーピーアイ) という仕組みを使って、2つのシステムが会話できるようにするんだ。たとえば「品番A001の現在の価格を教えて」と問い合わせると、DBが「3,500円です」と返してくれる、という感じね。
手コピーがなくなるから、価格ミスが起きにくくなるのが最大のメリットだよ。
今回作るもの、ざっくり整理
ヒアリングを終えて、「作りたいもの」のイメージがつかめてきた。
| やりたいこと | 現状の問題 |
|---|---|
| 製品マスターから品目・単価を自動取得 | 毎回手コピー、価格ミス多発 |
| 顧客ごとの単価・掛率を設定・保存 | 担当者の記憶・メモ頼り |
| 見積書を画面上で作成・管理 | Excelがバラバラ |
| 承認フローをシステムで回す | メール往復が不透明 |
| PDFで出力して顧客に送付 | 変換作業が毎回手動 |
いい視点!まずは既製品(SaaS)を調べるのが絶対正解だね。ゼロから作るより安いし、早いし、品質も保証されてる。
次回はSaaSをいくつか試してみた結果を見てみよう。「これでいける!」と思ってから、壁にぶつかる話になるんだけど……。